サウナは子作りに本当に悪いの?!

サウナは子作りに本当に悪いの?!

サウナに入ることは避けた方がよいのかどうかという質問をよく受けます。
陰嚢内の温度が若干高くなることにより造精機能障害を来すことが知られています。(その原因としてもっとも頻度の高い精索静脈瘤については近いうちにブログに載せます)

最初にサウナ好きの皆さんへのメッセージとしてお伝えしたいのは、「気を付ければ大丈夫!」です。

サウナは精子形成に悪いわけではない」と、私が尊敬する盟友のフィンランド小児科医のヨルマ トッパリ先生(彼とは世界の精子数問題の国際疫学調査に一緒に参加しています)が今年発売されたオックスフォードテキストブックに執筆しております。
フィンランドの若者の精液所見は精子数、精子運動率ともに世界でトップレベルにあるのです。
一方、興味ある事実として同じ北欧にあるデンマークの若年男性の精子数は世界で最も精子数が低いのです。理由はまだ分かっておりません。

しかし、反対の報告もあります。
イタリアのガローラら(2013)はフィンランドサウナの精巣への曝露が、精子形成に影響を及ぼすのか世界で初めての臨床試験を行っています。
精液所見正常の10人のボランティアで行われ、サウナ曝露前、 週に2回80~90℃のサウナに15分間の暴露続けて3か月目、曝露の終了後3か月目、終了後6か月目の計4回、精液検査、内分泌検査を行いました。
その結果、暴露開始後3か月目に精子濃度の減少、運動率の低下が観察されたものの、サウナ暴露終了後3か月目には正常化し、内分泌検査は有意な変化を認めなかったと報告しています。
結論として精液所見に可逆的ではあるものの、影響する可能性を示唆しました。
そして、サウナ人口が増えるにつれて男性の生殖能力に与える影響を考慮することが重要と強調しています。

やはり、サウナは良くないのか…となりますが、一口にサウナと言っても、フィンランドスタイルのサウナと日本のサウナは随分違います。
SAUNA&coより引用すると、前者は熱したサウナストーンに水をかけてスチームを発生させる「ロウリュ」を楽しむサウナで、水の代わりにアロマ水をかけて香りを一緒に楽しむこともあるようです。
「ロウリュ」を行うことでサウナの温度(60~80℃)や湿度(20~30%)を調整してスチームを全身に浴びて思い思いに楽しむようになっています
前述のトッパリ先生は1回15分以内でスチームを浴びて発汗作用を促すことを数回程度行うことは精巣の熱交換をうまく機能することから問題ないはずだと述べておられ、上記の結果に疑問を投げかけておられます。
いずれにせよ、さらに症例を重ねての検討が必要ですね。

日本のサウナはどうでしょうか?
日本にサウナが出来たのは昭和32年と言われています。
サウナ室の壁や床にも配管されていることから室内全体が熱く、温度は80~100℃、湿度は10~15%です。フィンランドのサウナ比べ高温で乾燥しています。
私の経験では15分も入っていられず、せいぜい10分が限度です。
熱から逃れてサウナを出てから水風呂に入ることで最高の気分になるというわけですね。
確かに精巣が高温になるので精子に対するダメージが懸念されますが、我慢して長時間入っていなければ大丈夫です。むしろ、汗を流して気分爽快になるというプラスの効果の方が大きいのではないかと思います。
日本の文化である湯船につかるお風呂に関しても、高温長時間はお勧めできないのですが、ぬるめのお湯に適度につかる程度は問題ありません。
報告されているデータがなく、何度で何分ならOKです、と数字で示せないのが残念ですが、あくまでリラックスが目的で、長時間でなければ、問題ありません。

まとめ:サウナは前述した臨床試験のデータからは精液所見正常者では15分以内程度であれば問題はないと言えます。楽しんでください。

ただし精液所見がかなり不良な男性不妊患者さんのデータは、残念なことにありません。
妊活中は長時間、頻繁な使用は控えた方が良いと思われます。

左側より岩本晃明、ツルク大学トッパリ教授、佐藤郁夫元自治医大産婦人科主任教授