理事長の中村嘉孝です。
今、「MORE SEX IS SAFER SEX -The unconventional wisdom of economics」という本を読んでいます。
経済学者が書いており、論理的な帰結というものが、いかに常識的な考え方と乖離しているかという事例を取り上げています。
その一つがタイトルにあるように、「もっと多くの相手とセックスするほうが、HIV感染症への対策になる」という論理です。
極めて簡略に考え、もし、ある国に娼婦が一人いるだけで、その他の女性はすべて決まった相手としかしないと仮定すると、複数の相手を求める男性はすべてその娼婦と寝ることになり、ひとたび彼女が感染すると、HIVがすぐに拡がってしまうことになります。
ですので、論理の上では、ある程度の数の相手を持つことが、感染への対策となるというのです。
もちろん、個々のカップルだけを考えれば、お互いに浮気をしないのが一番、安全です。
しかし、社会全体の厚生を考えると、そうではなくなる。少し浮気をする方が、世の中のためになるという論理です。
ハーバードの学者がイギリスを例に計算したところ、1年間に2.25人以下の相手としかセックスしない人たちが、もっと多くの人とするようになれば、HIV感染の拡大を遅らせることができる、ということでした。
本当かな?と思いますが、まあ、本当なのでしょう。
そして、このような人の神経を逆撫でするような議論を、わざわざ喜んでする学者がいるわけですが、実は私も少々大人気ない方なので、このような本を読むのが「好き」です。
「安く死ぬ義務」や「禁煙への課税」を提唱する哲学者、「命の価値」を定量化しようとする経済学者の議論など、読んでいて興味が尽きません。
ただ、私自身が現実の臨床に携わっている以上、このような議論を単に面白がっているだけですまないのは、苦しいところです。もちろん、色々な問題について自分なりに模索し、他のスタッフと意見を交換しながら、当院のポリシーは形作られていっています。
神経を逆撫でするような内容もあるでしょうが、そのようなことも含めて、ブログにありのままを書くことで、患者の皆様に私どものポリシーの背景にある考え方をお伝えすることができればと思います。
また、ブログに書き綴ることによって、皆様からのご批判、ご意見をお受けしながら、自らの考えをもっと整理することができればとも願っています。