理事長の中村嘉孝です。
昨日、サマージャンボ宝くじを買いました。
宝くじは、中学生のときに好奇心で買ったことがあるだけで、それから一度も買ったことがありません。
というのは、統計学を習ってからというもの、宝くじなど、到底、買う気にならなかったからです。
統計学には、「期待値」という考え方があります。
ややこしくいえば「確率×確率変数の和」ですが、要するにギャンブルでいうと、賭け金のうち平均的にいくらが戻ってくるのか、という話です。
仮に100枚のくじの中に当りが2本で、その賞金が1万円ずつだとすると、くじを1枚買ったときの期待値は、
「1万円×2÷100=200円」となります。
ちなみに、宝くじで戻ってくるのは50%弱のようで、平均的な人は、買った金額の半分以上を損する勘定になります。ですから今まで「宝くじを買った」という人には、「期待値って知ってる?統計学を理解していたら買わないはず」と言ってきたのです。
ところがいるんですね、ラッキーな人が。身近に、1億円を当てた人がいたんです。
こうなると、数学は何の役にも立ちません。
統計学がいえるのは、宝くじを買う前の人に対して「期待値から考えると、間違いなく不利な賭けですよ」ということだけであって、すでに大当たりを出してしまった人に対しては、何の教訓もありません。
医療の世界ではEBM(Evidence Based Medicine)と言って、統計的にみて効果のある治療法しか認めない傾向になってきています。確かに、医療費の分配を効率よく行おうとする場合や、いくつかある治療法の中からどれを選択するか迷うという場合には、統計が役に立ちます。
しかし一方で、目の前の患者さんは一人一人が、それぞれ違う存在です。
「統計的には、そんな治療法は効果がない」といくら言っても、その人には、とてもよく効くかもしれません。
実際、「やってみなければ判らない」ということなのですが、やってみたら取り返しがつかなくなる場合もあります。これが、生身の人間に対して行う医療の難しさです。
さて、一億円当てた人と出会ったために、私も思わず宝くじを買ってしまったのですが、結果はどうなることでしょうか。抽選日は8月10日だそうですが、どうなることか、今からドキドキしています。
もっとも、3千円分しか買ってないんですけどね。