理事長の中村嘉孝です。
「Tレグ」といっても、「Tバ○○」とか「ハ○レグ」とか、セクシーできわどい話ではありません。免疫細胞の一種であるT細胞の中に、「regulatory T cell」というものがあり、免疫細胞でありながら免疫反応を抑える役割をしていますが、この細胞のことを「Treg」と略記して「ティーレグ」と読むのです。
このTregですが、最近は、妊娠に関係しているといわれています。
お腹の中の赤ちゃんの半分は、元はと言えば他人である夫からできています。
免疫反応を引き起こす物質を抗原といいますが、胎児の細胞には夫の抗原があります。
夫からの臓器移植なら、抗原を認識して免疫拒絶反応が起きて攻撃してしまうのに、なぜか、妊娠のときには胎児の細胞にある夫の抗原への免疫反応は起きません。
このような現象を免疫寛容といい、そのメカニズムについては色々な説明がされてきましたが、現在、Tregが重要な役割をしていると考えられています。
妊娠するとTregが子宮内で増え、異物として攻撃しようとする免疫反応から、胎児を守ってくれるらしいのです。
とはいえ免疫の研究は日進月歩の上に、免疫細胞の間の関係性が複雑で、今はもっともらしい説明がされていても、後で実はまったく違ったということもあります。
実際、私の学生時代には、Tregとは全く別の細胞が免疫を抑制すると教科書に書いてありましたし、着床の免疫寛容についても、別のもっともらしい説明がありました。
先日、研究会で聞いた話では、受精卵が着床する少し前から、夫の抗原を知っているTregが子宮に集まり、夫の受精卵が着床しやすいように準備しているらしいのです。
でも、受精卵が着床するまでは夫の抗原と接することはありません。
Tregといえども抗原を認識できないはずなのに、なぜ?
どうも、性交渉のとき、腟内の精液中にある抗原をTregが認識、夫の抗原をもった受精卵が着床しやすいように、前もって子宮に移動するのではないかとのことでした。
確かに、辻褄は合っているのですが、ここまで行くと「ホントかな?」とも思ってしまいます。
「Tレグ」はセクシーな話ではないですが、きわどい話ではありました。