ブーム その2

ブーム その2

理事長の中村嘉孝です。

ある治療法がブームになり、学会でも有効だという報告が相次ぎ、その後、それが立ち消えになる。科学の世界なのに、どうしてそのようなことが起こるのでしょうか。

科学といえども人間のすることですので、色々な欲や感情が絡んでくることは避けられません。でっち上げとはいかないまでも、データの解釈にバイアスがかかることもあるでしょうし、流行に乗ったほうがオイシイと思うこともあるでしょう。

かといって、私はそれが必ずしも悪いことだとは思わないのです。
科学者に名誉欲や権力欲があるから、夜遅くまで研究するわけです。
不妊の基礎研究の分野で高名なある教授が、「今、この分野は、人、物、金が集まっているから面白いんだ」とおっしゃっておられましたが、率直なお気持ちだと思います。

たとえ不純な動機によってゆがめられた研究結果が一世を風靡しても、科学の世界にある限り、時間が経てば、いずれ検証されて消えていく運命にあります。
そして、その中で検証に耐えた成果だけが風化せず、次の発展への礎となる。
これは全く健全な、科学の発展の姿であると私は思います。

ただ問題は、それを臨床の場に持ち込むことにあります。
ゆがんだ研究成果によって治療が行われると、患者に危険や不利益をもたらしかねません。
現在、EBMが強く提唱されているのもそのためなのでしょうが、残念ながら医学も科学の一部であり、結局は、他の科学分野と同様のプロセスでしか発展することはないであろうと、私には思えます。