医師の船曳美也子です。
当院では毎週、スタッフが集まって勉強会をしてまるのですが、その中で国際医療技術研究所(IMTCollege)というところが出しているDVD講座を視聴しています。
この研究所は、自治医科大学で生殖内分泌センター長をしておられた、日本の体外受精治療の第一人者である荒木重雄先生が立ち上げられました。
先生は非常に教育熱心であられ、確かな知識に基づいた、本当に患者さんのためになる不妊治療を普及させるために、心血を注いでおられます。
DVD講座では毎月、アメリカ不妊学会と欧州不妊学会が出している2つの学術誌に載っている膨大な数の論文を、すべて先生が読み込んで要点を解説して下さるのですが、大変なご努力を継続しておられる姿に頭が下がります。
さて、今週はアメリカ不妊学会の「Fertility andSterility」の先月号についての解説を見たのですが、特集は「アディポネクチンの生殖での役割:多嚢胞性卵巣から生殖補助技術まで」というものでした。
脂肪細胞は、従来、エネルギーを貯蔵するものとしか考えられていませんでしたが、10数年前に、脂肪組織がレプチンという食欲抑制や生殖にかかわるホルモンを分泌することがわかりました。
それ以外にも、脂肪はいろんなホルモンを分泌することがわかり、これらは「アディポカイン」と呼ばれています。
タイトルにあるアディポネクチンも、脂肪細胞からでるアディポカインのひとつで、メタボリックシンドロームに強く関係しているホルモンですが、子宮内膜、視床下部・下垂体、卵巣、精巣にも作用し、生殖をコントロールしていることが分かってきました。
解説の中で荒木先生は、『今や、アディポカインの理解なくして、不妊治療の理解を深めることはできない。』と言っておられましたが、本当に同感です。
さて、オーク会でも数年前から脂肪細胞と不妊の関係に着目し、妊娠率をあげるためにいかにダイエットが重要かを、学会などで提唱してきました。
専門のダイエットプログラムを作成して成果を上げてきたと自負しているのですが、このたび、よりきめ細やかな対応ができるように、なんばレディースクリニックで「ダイエット専門外来」を開設することになりました。
もちろん、不妊治療の一環としてのダイエットにとどまらず、女性が健康で美しくあることを願い、よりよいプログラムにしていくように、一層の努力していくつもりです。