医師の船曳美也子です。
アメリカ小児科学術誌等の統計によると、アメリカでは、この30年で肥満児が5%から17%と3倍になっており、さらに、現在3人に1人の児童が過体重か肥満です。
また、肥満児はそのまま肥満の大人になりやすいので、このままでいくと、2018年には43%のアメリカ人がBMI30以上の肥満になると報告されています。
(1980年は15%でした。)
また、肥満による米国経済損失は2010年で年間2,700億ドルと上昇(03年は750億ドル)しています。
肥満の経済にあたえるダメージに危機感をもったアメリカでは、昨年5月に、“Childhood Obesity Action Plan”を発表したオバマ大統領夫人の活動をはじめ、肥満児童をへらす努力が活発になっています。
ところで、Lancetという世界で最もよく知られ、最も評価の高い一般医学雑誌があるのですが、2010年『妊娠中の体重増加が児の肥満リスクになる』という報告をだしました。
「遺伝子要因を除外し、1年間の出生記録から母親51万人出生児116万人の分析をしたところ、妊娠中の体重増加と出生時体重は一貫した相関性があり、24キロ以上増加した母親からは4キロ以上の巨大児の出産が2倍以上高かった。」というものです。
この論文そのものは、妊娠中の体重管理はこどもの肥満予防に必要である。という内容ですが、その付随論評で、妊娠中だけでなく妊娠前から適正体重の維持が重要で、介入法を考えるべき、と語られています。
つまり、肥満は経済損失が大きいので、解消するべし。
その肥満のはじまりは、肥満の児童であり、肥満児のはじまりは肥満妊婦であるので、世代にまたがる過体重の悪循環を断ち切るために、まず女性が適正体重で妊娠することに焦点をあてることが重要、という流れのようです。
『妊娠前に適正体重にもっていくこと』は長期的な経済学的視点からみて必要とされています。