医局カンファレンスです。
今日は、子宮筋腫と胚着床の関連性について考えてみます。
ご存知の方も多いと思いますが、子宮筋腫は子宮の壁の中にできる良性の腫瘍です。良性ではあるものの、短期間で突然大きくなったり、数が増えたりするのが、子宮筋腫の特徴です。
30-40歳台の女性の3人に1人が、大なり小なり子宮筋腫を持っていると考えられています。
子宮筋腫は子宮壁から成長する方向によって、次の3つのタイプに分かれます。
- 粘膜下(ねんまくか)筋腫:子宮内膜側へ向かって成長し、子宮の内腔を変形させる
- 筋層内(きんそうない)筋腫:子宮の壁の中で成長し、子宮の内腔を変形させない
- 漿膜下(しょうまくか)筋腫:子宮の壁から外側へ向かって成長し、子宮の内腔を変形させない
「粘膜下筋腫が着床障害の原因となる」ということは、現在明らかになっています。
子宮の内腔の変形が、その第一因です。特に半分以上が内腔に飛び出す粘膜下筋腫については、子宮鏡手術で取り除くことによって、体外受精・胚移植による妊娠率が改善することが明らかになってきました。
当院でもこのタイプの小さいものに対して、積極的に子宮鏡手術を行っています。
筋層内筋腫の患者さんでも着床率が低いことが徐々に判ってきましたが、残念ながら、筋層内筋腫を手術で取り除いても、体外受精・胚移植の成績が改善しなかったという報告が、相次いでいます。
最後に、漿膜下筋腫は、着床の妨げとはならないとする意見が多数です。
しかし、筋層内筋腫や漿膜下筋腫については、筋腫の個数やサイズ、出来る位置などの因子が、どのように妊娠に影響するかは、まだほとんど何も分かっていません。
「なかなか妊娠できない。子宮筋腫が見つかった。じゃあ手術で取ってみましょう」というプランは、やや短絡的です。逆に手術することによって、その後の妊娠に影響を及ぼす場合もありえますので、慎重に検討する必要があります。