学会報告

学会報告

理事長の中村嘉孝です。

ストックホルムで開かれていたESHRE(欧州ヒト生殖医学会)に行ってきました。
プレコングレス・セミナーを含め4日間、体外受精の排卵誘発法、体外受精・顕微授精のテクニック、生殖遺伝学の最新の知識やライブ手術など、充実した学会でした。
中でも一番、私の記憶に残ったのは、「不妊治療の前に肥満を治療すべきか?」というディベートでした。

「治療成績を上げ、妊娠後のリスクを下げるため、IVFの前にダイエット」という、当院が何年も前から提唱し、取り組んできたことの重要性が、やっと広く認識されてきたことを、うれしく思いました。
今回のディベートも、それが医学的に正しいことを認めつつ、それでもダイエットを嫌がる患者の体外受精を、医師は拒否すべきかどうかという倫理的なレベルの議論でした。

ただ一方で、「減量に時間がかかるため、卵巣年齢が進んでしまう」という話がでたのは、残念でした。
短期に集中的なダイエットをする具体的な方法を、産婦人科医が知らないためです。
今回の学会でありませんが、この当院オリジナルのダイエット法を、次のアメリカ生殖医療学会で船曳医師が発表します。質問に立って宣伝しておこうと思ったのですが、すでにマイクの前には行列ができており、順番は回ってきませんでした。

さて、せっかく北欧まで来ておきながら、学会以外はホテルの周辺を散歩しただけです。
しかし、ホテルのケーブルテレビに「On Stockholm」という観光案内のチャンネルがあって、それを見ただけで、すっかり観光した気分になることができました。

番組の間には「ミニ知識」みたいなコーナーがあって、「スウェーデンは国会議員の43%が女性」とか、スウェーデンの事を色々紹介していました。
他には、「スウェーデンは女性の進学率が世界一高い」、「一世帯の人数が2.1人と、世界一小さい」など。

そして、「もしあなたがパートナーを探しているなら、スウェーデンに来ると良い。
なぜなら、世界で一番、独身者の率が高いから」というのもありましたが、不妊は医学的疾患であると同時に、社会的な現象でもあるということを、改めて感じました。