医局カンファレンスです。
米国フロリダ州のケネディ宇宙センターより、最後のスペースシャトル・アトランティス号が打ち上げられました。
打ち上げ前のニュース記事で、’launch window’というフレーズが盛んに使われていました。これはシャトルの「打ち上げ可能時間帯」を意味します。
地球の自転や公転、気象などの諸条件のため、打ち上げることのできる時機は限られるそうですが、多少の調整はきくために、このように表現されるようです。
同様に、胚の子宮への着床にも「可能時間帯」があり、’implantation window’と呼ばれます。
日本語では’着床の窓’と直訳して紹介されることも多いですが、視覚的な理解しやすい表現だと思います。
ヒトの自然排卵周期ではimplantation windowはLHサージ後(排卵誘発周期ではHCG投与後)の6-8日目ごろと推定されています。ヒトの子宮内膜が排卵後に日々激しく形を変えることを利用して、内膜が「胚着床可能な時間帯」にあるか否かを判定する「内膜日付診」という病理組織検査があります。
日付診は徐々に行われなくなってきましたが、内膜生検同様に(2011-02-07のブログをご参照ください)、専門家の間では再び注目を浴びています。
どちらかというとこれまでの日付診では‘2日以上の遅れ’(例を挙げると、LHサージ後6日目にも関わらず、子宮内膜はLHサージ後4日目未満の形態を示す状態)が問題視されてきました。
逆に最近では進みすぎた内膜は胚を受け入れることができないことが明らかになってきています。
中には‘3日以上の進み’状態では、絶対に着床は成立しないとする報告もあるぐらいです。
この進みすぎた内膜を誘導する因子のひとつに、過排卵刺激の関与が示唆されていますが、どのような量、使い方でそうなってしまうのか、どのようなタイプの女性に起こりやすいか、どのように予防・治療できるのか、などについてはほとんど不明で、今後の課題です。
このことからも胚着床がいかに繊細な現象かということが伺えると同時に、着床不全の原因を求めるべく子宮内膜の状態を積極的に調べていくことも、引き続き重要ではないかと考えています。