着床を操る“手”

着床を操る“手”

医局カンファレンスです。

黄体ホルモン(プロゲステロン)は胚の着床に必須の女性ホルモンです。
黄体ホルモンは、その名のとおり、排卵した後に卵胞が変化してできる黄体という部分から作られます。
黄体ホルモンは、子宮内膜に対して、増殖を抑え着床に必要ないろいろな蛋白質を作るように指令しています。

融解胚移植を経験したことのある方はご存知かもしれませんが、それまで卵胞ホルモン剤(子宮内膜を厚くする作用を持つ)を服用していたのが、移植日決定とともに黄体ホルモンが処方されるのはそのためです。
黄体ホルモンはそのほかにもいろいろな作用を持っていて、機能性の子宮出血を止めたり、月経期間を移動させたり、あるいは避妊の目的で処方されることもあります。

黄体ホルモンが、どのように卵胞ホルモンに逆らって子宮内膜の増殖を抑えるのか、実はこれまで不明でした。
最近、Hand-2という蛋白がこれに関わっているとの報告がありました
(Li Q et al. Science, 2011: Vol. 331 no. 6019 pp. 912-916)。
詳しい話はここでは割愛しますが、黄体ホルモンの指令が子宮内膜に作用すると、一部の子宮内膜細胞の中のHand-2が働きをはじめ、FGFという蛋白質の合成を抑えて子宮内膜の増殖に待ったをかけていることが、マウスで示されました。

あくまでもマウスでの結果で、ヒトに当てはまるかどうかは今後の研究を待たねばなりません。
着床のプロセスについては未知の部分がいまだに多く、こうしたことが解明されればさらに胚移植の成績は向上していくだろうと思うのですが…