シーマンシップ

シーマンシップ

理事長の中村嘉孝です。

前回、船と運命を共にする船長の話を書きましたが、船乗りの世界に「シーマンシップ(Seamanship)」という言葉があるのをご存知でしょうか。

例えばスポーツマンシップというのは、「正々堂々と戦い、友好を築く」といったスポーツマンとしての心のあり方のことですので、当然、シーマンシップといえば、「いざとなれば自分の命を顧みずに仲間を助ける」というような、海の男の心意気を言っているのだと思ってしまいます。

ところが、意外なことに「シーマンシップ」というのは、そのような精神論を言っているのではなく、単に、係船ロープの結び方やコンパス航法などといった、船を操る技術のことを指しているだけなのです。

考えてみれば、いくら心意気のある船長でも、操船技術がいいかげんでは、話になりません。
医療の世界でも同じことで、どれほど献身的で誠実な医療者であったとしても、まず、技術がなければ、どうしようもありません。

報道を見る限り、今回の事故の船長は、なぜか規定の航路を通らず岸に近づき、わざわざ海図に載っている岩礁に乗り上げているようです。
先に逃げるなという精神論より以前に、基本的なシーマンシップの問題だと思えます。