着床に必要な子宮内膜の炎症とは…その4

着床に必要な子宮内膜の炎症とは…その4

医局カンファレンスです。

まず間違いなく着床に必要な炎症性蛋白でありながら、注射薬として使っても逆効果であったLIFの話を前回採り上げました。

胚着床期の子宮内膜の炎症についてはまだ分かっていない部分が多いのですが、排卵後の卵巣で作られる黄体ホルモン(プロゲステロン)が中心となって、子宮内膜に特有な免疫反応を引き起こすことは、多くの研究結果からまず間違いなさそうです。

黄体ホルモンは免疫抑制作用をもっていて、この作用が胎児を母親の攻撃から守るものと、かつては推測されていました。

しかし少なくとも子宮内膜に対しては全く逆で、黄体ホルモンが子宮内膜に積極的に働きかけて炎症性の蛋白を合成・分泌させることが明らかになってきています。

これらの炎症性蛋白の中にIL-15とMIP-1betaがあります。
IL-15とMIP-1betaは、大学院時代に研究テーマとしていた蛋白で黄体ホルモンは子宮内膜のIL-15とMIP-1betaの合成・分泌量を増やす作用を持つことを報告した、思い入れの強い分子です。
(Biol Reprod. 2000 Sep;63(3):683-7., J Clin Endocrinol Metab. 2003 Apr;88(4):1809-14.,)

少し前になりますが、「子宮内膜損傷がIL-15とMIP-1betaという蛋白を増加させる」という内容の論文が発表されました (Gnainsky Y, et al. Fertil Steril. 2010 Nov;94(6):2030-6. )。
特にMIP-1betaの意義について討論されています。

子宮内膜生検が反復着床不全後の妊娠率・出産率を改善することは、このブログでもたびたび紹介してきました。最近も有効性を示す海外からの論文が相次いでいますが、内膜損傷に黄体ホルモンと共通した作用があることは驚きです。内膜生検によって着床に必要な炎症を誘導することができる可能性が考えられます。