第126回近畿産科婦人科学会

第126回近畿産科婦人科学会

先日、近畿産科婦人科学会で「融解周期で妊娠成立し、その後OHSSとなった症例」で発表してきました。

OHSSとは卵巣過剰刺激症候群といわれる病気で、卵巣が大きくはれあがり、腹水や胸水がたまります。さらには、尿が出なくなり、血液濃縮による血栓症(血管の中で血が固まる)を起こすことがあります。

不妊治療の際はどうしても卵巣を刺激する必要があり、このことが原因となり、発病するため、大きな問題となっていました。OHSS分類は軽症、中等症、重症とあり、重症の場合はかなり長期間にわたり入院が必要になることがあります。また、この病気は妊娠が成立すると悪化していきます。

これは、HCGといわれるホルモン(排卵誘発に用いたり、妊娠が成立すると胎盤で産生される)が分泌されると症状が悪化していくからです。
実際には、妊娠の20週を超えても卵巣の状態が落ち着かないことがあります。

ただ、近年は胚の凍結技術が進み、卵巣刺激をした後、胚を凍結して、卵巣の状態が落ち着くことを確認してから、胚移植、妊娠となるので重症のOHSSはあまり認めなくなりました。
当院でも10個以上卵子を回収した場合は、胚を全凍結して、卵巣の状態を確認してから、胚移植を行っています。

ところで、なぜ今回の発表になったかといいますと、今回は体外受精の融解周期のため、卵巣刺激を行っていないのにもかかわらず、発症したことが疑問だったからです。
学会では、ホルモンレセプターの変異が存在し、妊娠することにより卵巣が異常に反応することが原因ではないかとの意見が出されましたが、現在のところはまだ、はっきりとはわかっていません。

人体にはそれまでの医学的経験をこえて、さまざまなことが起こります。
注意深く診療をしていく必要があると再度認識しました。