透明帯の厚さと胚着床

透明帯の厚さと胚着床

医局カンファレンスです。

鳥や爬虫類の卵が固い”殻”に覆われるように、ヒトの卵は「透明帯」に囲まれています。透明帯に結合した精子は、さまざまな化学反応を経て受精します。
受精卵が胚盤胞まで分割・拡張する頃、透明帯は破れます。
透明帯から外へ出た胚盤胞が子宮内膜に接着することにより、着床が開始します。
ヒトの透明帯の厚さは約15マイクロメートル、(1マイクロメートル = 0.001mm)です。ちなみに卵の直径は約150マイクロメートルです。

体外受精3日目の初期胚の透明帯の厚さと、諸因子との関係を調べた研究結果が最近出されました (Balakier et al., Fertility and Sterility, in press) 。
5,000個以上もの胚を写真撮影し、専用ソフトウェアを使って透明帯厚を5ヶ所で測定し、平均値を求めています。

この研究者たちは、グレードの良い胚ほど透明帯厚が薄い傾向にあると結論しています。
一方で、患者年齢、不妊原因、ホルモン値、卵巣刺激法と関連性は無く、着床率や妊娠率とも相関しなかった、そうです。

2-3日目の初期胚移植の成功・不成功の予知に透明帯厚を利用するのは難しそうですが、5日目の胚盤胞ではまた違う結果が得られる可能性はあり、今後の研究が待たれます。