医局カンファレンスです。
「慢性子宮内膜炎は、将来の不妊症リスクを大きく高める」米国産婦人科学会機関紙の「Obstetrics & Gynecology」にこのような内容の臨床研究が掲載されました (Wiesenfeld et al. 2012;120:37-43) 。
この調査は米国の性感染症外来で行われたもので、対象となっているのはすべて過去に妊娠経験のある女性です。不妊症患者ではないことにご留意ください。
子宮頚管にクラミジアまたは淋菌が検出された女性に対して子宮内膜生検を行い、慢性子宮内膜炎の有無を調べ、クラミジアまたは淋菌の治療薬である抗生剤を投与しています。
その後2年半の妊娠経過を追跡したところ、クラミジア/淋菌性子宮頚管炎+慢性子宮内膜炎患者では、クラミジア/淋菌性子宮頚管炎のみの患者やクラミジア/淋菌陰性の女性に比べて、続発性不妊症となる割合が4割も高くなることが明らかになりました。
クラミジア・淋菌性子宮頚管炎を治療しても、この数字を改善することはできなかったとのことです。
繰り返しますが、全員が過去に妊娠経験を持っていますので、慢性子宮内膜炎によって妊娠する能力が損なわれることが今回はっきりしました。
また、クラミジアや淋菌を退治する抗生剤では、妊娠率低下を防げなかったことから、慢性子宮内膜炎の主犯はクラミジアや淋菌ではないということも暗示しています(前回ブログ記事 慢性子宮内膜炎…その5参照)。
これまでにも紹介してきたとおり、慢性子宮内膜炎は、体外受精-胚移植後・反復着床不全患者に非常に多く見られます。
われわれの施設では、このような慢性子宮内膜炎を合併した体外受精-胚移植後・反復着床不全患者さんに一般細菌およびマイコプラズマを標的にした抗生剤を処方することにより、その後の良好な妊娠成績が得られています。
詳細は、次回報告いたします。