多のう胞性卵巣症候群(PCO)

多のう胞性卵巣症候群(PCO)

医師の田口早桐です。

私もこのお仕事を始めてはや20ン年が経ってしまいました。
その間に、何が分かるようになったというのでしょうか?
確かに、技術は格段に進歩して、胚凍結や卵子凍結、精巣精子の採取、以前は妊娠が難しいと思われたカップルも妊娠が可能になりました。しかし、先月の受精着床学会に出席したときも感じましたが、全く解決しないまま、ずっと議論が繰り返されている話題も多々あるのです。

「多のう胞性卵巣症候群 polycystic ovary:PCO」もその内の一つ。典型的には、非常に月経周期の長い、つまり、排卵がなかなか起こらない女性で、超音波で卵巣を観察すると、小卵胞がたくさん見える、という状態。放っておくと年間の排卵回数が非常に少なく、排卵日の予測もつかないので、妊娠が困難。
挙時希望で来院されるのですが、通常量の排卵誘発剤ではなかなか排卵しないので、最終的に連日排卵誘発剤を注射する羽目になることも多いです。
PCOの方というのは、様々な程度がありますが、非常に数多いのです。

連日の排卵誘発剤注射でやっと発育してきたと思ったら、両方の卵巣に大抵複数個の卵胞が見えることが多い。しかし多胎防止の観点から、15mm以上の卵胞が3個以上の場合は、その周期の治療を中止します。
つまり、三つ子以上になる可能性があるため、性交渉を持たないようにするとか、月経を起こさせるとか、します。

せっかく頑張って注射を続けたのに、やっと排卵できると思ったら、キャンセルとは、納得いきません。
泣く泣く諦めて、また次の周期にトライしたら、またもや同じ理由でキャンセルということも稀ではないのです。

では、どうするか…。

今は、体外受精に切り替える、という方法が一般的になっています。体外受精なら、一つだけ子宮に戻して、残りは凍結しておいておく、ということも可能ですから、その方法がスタンダードとなりつつあります。
なかなか卵胞が育たないのに、育ったら育ったで、過剰になってしまう…。
そんなジレンマが、今は技術で解消できるようになっているのです。