医局カンファレンスです。
慢性子宮内膜炎を放置したまま妊娠すると、赤ちゃんに望ましくないことが起こりうる。今日は、このテーマを取り扱います。
妊娠が成立すると、子宮内膜はいろいろな内分泌の影響を受けて “脱落膜”に呼び名を変えます。
「脱落」という名に反して、脱落膜は非常に丈夫な粘膜で、通常は分娩後まで子宮の壁からはがれず、妊娠の維持に貢献します。
慢性子宮内膜炎を持ったまま妊娠すると、かなりの割合で、「慢性脱落膜炎」に進行することが明らかになってきました
(Ghidini and Salafia. Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavica2005; 84 :547e50)。
この研究によると、妊娠中に形質細胞が脱落膜で増えてくるよりも、”妊娠前から居座る余計な形質細胞を含んだまま子宮内膜が脱落膜に変化してしまう”ことのほうが多いようです。
切迫早産、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり、大変怖い妊娠合併症のひとつです)や新生児の脳室周囲白質軟化症(のうしつしゅういはくしつなんかしょう)が起きたケースで胎盤を調べると、「慢性脱落膜炎」が高い割合で見つかることが次々と報告されはじめています
(Maleki, et al., Obstetrics and Gynecology 2009; 114: 1115-1120.
Elsasser, et al., European Journal of Obstetrics, Gynecology, and Reproductive Biology 2010 ;148: 125-130.
Edmondson et al., Pediatric and Developmental Pathology. 2009; 12: 16-21.など)。
慢性子宮内膜炎は、抗生剤治療によりほぼ100%完治可能です。見つかった方には治療をお勧めしています。