医師の船曳美也子です。前回の続きです。
子宮内膜症の治療は、妊娠したいかしたくないか、将来子どもをほしいかどうか、で全く異なります。
もともと月経周期にあわせて症状がおこるわけなので、月経がなければ症状もありません。閉経してしまえば、内膜症の部分もいずれ吸収されてなくなってしまいます。なので、昔は閉経と同じ状態をつくる薬による治療が主でした。
ですが、閉経と同じ状態をつくることは、排卵させないということ。
つまり、妊娠の機会を半年以上失うということです。
そして、また、妊娠したい方にとっては、これらの薬は妊娠率をあげるものではないことがわかってきました。
では、手術はどうでしょうか?
確かに腹腔鏡手術で腹膜の内膜症の部分を焼くと、症状は軽減します。
そして妊娠しやすさも少しはあがるのですが、残念ながら改善率は8%程度です。
なので、最近では、不妊症のかたには、腹腔鏡を積極的に行うのではなく、必要があって腹腔鏡手術を行った場合に、内膜症病変があればとっといたほうがいいよ、という程度になってきています。
また、チョコレート嚢腫を腹腔鏡手術で除去すると、将来早発閉経のリスクが高くなったり、また体外受精で卵巣を刺激しても取れる卵子の数が少ないこともわかっています。
腹腔鏡手術が出はじめて婦人科でも盛んにされだしたのが、約20年前。
その当時はいかにうまく手術するかという方法論ばかり学会で盛んで、そのための合併症として、早発閉経になるということをいわれていた方は極わずかでした。が、それから20年を経て、やはり卵子の数の減少が今問題になっています。
また、これも再発が多いなどの理由で敬遠されていた、チョコレート嚢腫を吸引してアルコール固定する方法も不妊症の方には採卵できる卵子を増やす可能性があるとして、再び注目されています。
このように、主流になる治療法は時代とともに変わります。
が、体外受精や人工授精がより安全で確実にできるようになった今では、内膜症の方で不妊のかたは、内膜症そのものを治療するというより、タイミングよりは人工授精、体外受精といった積極的治療をしてすこしでも早く妊娠に近づける、という手段が内膜症の治療の上でも最も有効とされています。