薄い子宮内膜への対策…その1

薄い子宮内膜への対策…その1

医局カンファレンスです。

子宮内膜が胚を受け入れるためには、6mm以上の厚さであることが望ましいと考えられています。この厚みを境にして妊娠成績が大きく異なるためです
(Revel A. Fertil Steril. 2012;97(5):1028-32)。

多のう胞性卵巣症候群など、排卵障害の治療に広く用いられる排卵誘発剤・クロミッドは、脳の視床下部とよばれる部分に働きかけて、卵胞の成長に関わる一方で、子宮内膜の増殖を抑え、薄い内膜の一因となります。

クロミッド使用時の薄い内膜に対して、プレマリンなどのエストロゲン剤を併用する方法があります。
しかし、卵胞が育っても内膜厚が6mmに届かないことや、6mm以上に達しても妊娠が成立しない周期がほとんどです。

クロミッド周期の内膜は、ただ薄いだけでなく、着床に必要な分子の発現量に異常のあることが、科学的に証明されています
(Savaris RF et al. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(6):1737-1746.
Gregory CW et al., J Clin Endocrinol Metab. 2002;87(6):2960-2966.)。
排卵には良いが、着床には好ましくない薬と云えます。

クロミッドを使ってタイミング法や人工授精を何度か試したけれどもうまくいかなかった経験をお持ちの方は少なからずおられると思います。
ひとつには、内膜の問題があると考えられます。
このような方には、体外受精・胚移植が良い適応です。

卵の状態は概して良好で、内膜の状態さえ良ければ、胚移植で妊娠が十分に期待できます。

胚の凍結・融解技術が進んだ現在、エストロゲン剤で内膜のコンディションを整えての移植は、困難ではなくなりました。

思い切って体外受精に進まれてはいかがでしょうか。ぜひご検討ください。