アフリカ

アフリカ

理事長の中村嘉孝です。

7日付のNew England Journal of Medicineに『いつアフリカでARTを始めるべきか?』というタイトルの論文がありました。そういえば数年前、不妊の国際学会でガーナ人のドクターと隣合わせになったことがありましたが、『ガーナチョコ』がいかに日本で有名かという話はしたものの、ガーナでの不妊治療については、「周産期が忙しくて、ほとんど手が回らない」ということでした。

そんな訳で、「ついに、アフリカでも体外受精が日常的になってきたのか」と驚きながらページをめくったのですが、ARTといっても高度生殖技術 Advanced Reproductive Technologyではなく、抗レトロウィルス療法 Anti-retroviral Treatmentで、エイズの治療のことでした。

かつては致死的な病だったエイズも、最近は薬物療法が目覚しく進歩し、完治はできなくとも、発症を抑えながやっていくことができるようになっています。先日は、「出産時に母子感染した新生児のウィルスが治療で消えた」という朗報さえありました。

さて、御主人がHIV陽性の場合、母子へのHIVの感染を防ぐために体外受精が行われるのですが、当院にも、時々、お問い合わせをいただきます。もちろん、精子を処理してウィルスを除去するプロセスは技術的に対応可能なのですが、念には念を入れて、培養液中からも確実に除去されていることを確認するのが望ましいと当院では考えています。ただ、そのために高感度PCRなどの特殊な検査を行ったりする必要があるため、現在のところ、大学病院の受診をお勧めしております。私どもが直接、お力になることができず申し訳ありませんが、ご理解を下さい。

ご存知のように、アフリカではHIVの感染率が高く、今後は、その点からもアフリカでの体外受精の普及が必要になってくるかもしれません。ちなみに、今年の9月の世界体外受精学会は、北アフリカのチュニジアで開かれる予定です。
周囲からは反対されているのですが、できれば参加したいと思っています。