慢性子宮内膜炎…その10

慢性子宮内膜炎…その10

医局カンファレンスです。

慢性子宮内膜炎の症状について外来診察で質問をいただくことが増えてきましたので、これを機に整理したいと思います。

何らかの良性の骨盤の病気のため、子宮摘出術を受けた患者様について、術後に組織学的に慢性子宮内膜炎と診断された方と、そうでは無かった方の間で術前問診表をもとに症状を比較しました。
(Kitaya K and Yasuo T. Am J Reprod Immunol. 2011;66:410-5.)

慢性子宮内膜炎は全体の11%に見つかりました。

不正性器出血は、慢性子宮内膜炎患者の65%、非内膜炎患者の13%に見られました。

以下それぞれ、

下腹部・骨盤部痛、11% vs 12%
性交痛、3% vs 5%
帯下(おりもの)、38% vs 35%

月経関連症状については
過長月経(8日以上続く月経):26% vs 31%
過多月経:19% vs 22%
血塊:11% vs 12%
月経痛:3% vs 11%

でした。

以上よりこの研究では慢性子宮内膜炎に特徴的といえる症状は、不正性器出血でした。

しかし、患者様の多くが、子宮筋腫や子宮腺筋症をはじめ、不正性器出血の原因となる病気のために子宮摘出術を受けています。

また、子宮摘出によって子宮由来の不正性器出血は術後には全員改善しています。

したがってこの不正性器出血は、慢性子宮内膜炎がもとで起きたものなのか、他の原因に由来するものなのか、因果関係をはっきりさせることはできません。

ただ、慢性子宮内膜炎は全般に症状に乏しい病気だ、ということを知ることは分かります。

他の結果もあわせてまとめておきます。ご参考ください。

  1. 慢性子宮内膜炎に特徴的といえる症状は、不正性器出血である
  2. 慢性子宮内膜炎の23%の患者さんでは自覚症状がない
  3. 子宮内避妊器具の現在または過去の使用経験がある女性に多い
  4. 出産経験のある女性に多い
  5. 症状の多い患者様ほど、炎症の程度は重い