不妊治療とプロラクチン

不妊治療とプロラクチン

当院では、不妊治療を中心に診察をしています。
不妊治療では、検査と治療が同時に進んでいくのですが、特に最初の検査としてホルモンの基礎値を測定します。
エストロゲン(正確にはE2、エストラジオール)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、乳汁分泌ホルモン(PRL、プロラクチン)を測定します。

前3項目は、名前からして女性の妊娠に関係ありそうなホルモンです。
ところが、PRLも不妊治療と非常に関係があるホルモンなのです。PRLが高いと排卵障害を起こします。
多のう胞性卵巣で排卵障害がある患者様でも、PRLは高いことが多いです。
ただし、このホルモンは、食事やストレス、薬剤などで大きく変更することが多く、正常値より高い値であっても、排卵をしていれば様子を見ていることも多いのです。

測定方法により、正常値の値は異なりますが(当院では1.4~14.6ng/ml)だいたい50を超えてくると、脳下垂体の精密検査(MRI)をすることが多いです。
また、プロラクチンを下げる治療を開始することもあります。実際には、高プロラクチン血症を起こす薬剤を服用している場合は、その薬剤の検討をします。
また、倦怠感やむくみの強い方は甲状腺機能低下症の可能性があり、そちらの検討を行なうこともあります。

ところが、プロラクチンは妊娠の妨げになるので下げればよいかというとどうもそれでよいわけではありません。プロラクチンを下げすぎると卵子の質が悪くなることが報告されています。
さらに、妊娠が成立すると、プロラクチンは急激に上昇していきます。
だいだい妊娠10週で2倍くらいの値になります。
キットの種類にもよりますが最終的に妊娠期間中100-200ng//mlくらいまで上昇します。
高プロラクチン血症の治療薬を飲まれている患者様については、妊娠が判明した段階で、その薬の中止を指示しています。

参考文献:産婦人科Clinical Data、産科と婦人科増刊号 1993.Vol.60 診断と治療社
卵子学 京都大学学術出版会