医局カンファレンスです。
動物の研究で、ビタミンD欠乏が不妊症や妊娠・新生児合併症に関わっていることが以前から知られていましたが、ヒトにもこれが当てはまることが、疫学研究から次々に明らかになってきました。(Luk J, et al. Human Reproduction 2012;27(10):3015-27.)。
ビタミンD欠乏症が着床不全に関与している可能性についてニューヨークの専門家から発表がありました (Rudick B, et al. Human Reproduction 2012;27(11):3321-7.)。
188 人の体外受精を受けた白人の不妊症女性について採卵前に凍結しておいた血液中のビタミンD濃度を測定し、30 ng/mL以上を「正常」、20~30 ng/mを「不十分」、20 ng/mL未満を「欠乏」と分類して、比較したところ、ビタミンD濃度が低いほど臨床妊娠率が悪いことが分かりました。
欠乏群では正常群の約4分の1の低い成績でした。
一方で、ビタミンD濃度と採卵数や胚のグレードには関連はありませんでした。
以上から、ビタミンD欠乏は卵の質、受精、分割よりも着床に影響するのではないかと著者らは考察しています。
日本では取り上げられる機会が少ないですが、ビタミンD欠乏症は北米や豪州をはじめとして、先進国全般で深刻な問題となっています。ビタミンD欠乏症は骨以外にも、免疫・甲状腺・がん・循環器の病気や感染症などと関わっていることが海外でよく調べられています。
最近もビタミンD欠乏症のドイツ人を10年弱追跡したところ正常値の人に比べてがん、心筋梗塞による死亡率が1.4倍高いことが明らかになりました。
先進国にビタミンD欠乏症が多い大きな理由は「日焼けを嫌う習慣」にあるようです。
ビタミンDが豊富な食品は少なく、食事だけでビタミンDを十分量摂取するのはかなり困難です。ビタミンDは体で作らねばなりません。そのためには日光を浴びる必要があります。
日本骨代謝学会によると「晴れた日に顔と肘から先の腕を15分直射日光に当てるだけで、ビタミンDが合成され、この程度の紫外線では、皮膚癌の心配はほとんどない」とのこと。
紫外線による悪影響ばかりが強調されがちですが、ある程度の日光浴が健康の維持のために必要です。