培養士の佐治です。
7月の7~10日にロンドンで開催されたヨーロッパ・ヒト胚生殖医学会 (ESHRE, 2013)に、中村理事長、田口医師、北宅医師と培養士の吉川と私の、計5名で参加してきました。
不妊治療について、最新の再生医療の進歩から体外受精の培養や凍結についてのテクニックまで様々な内容が取り上げられており、当院からは、OHSSと卵胞液についての発表をしてまいりました。
人気のあるセッションでは入場制限されてしまうほどの盛況ぶりで、この分野の注目の高さと今後の広がりを改めて感じました。そして、日ごろから論文で接しているだけの研究者やエンブリオロジストたちとも直接、質疑をすることができ、現在の世界中のラボの現況を知るいい機会となりました。
早速、当院での治療方針を変更することになった発表もありました。
胚盤胞の選択についての最近のデータの発表です。
胚盤胞では、胎児になる部分(ICM)と胎盤になる部分(TE)に細胞が分かれ、それぞれのグレードを評価します。これまでは、当然、胎児になる部分のグレードを優先して評価していたのですが、データの統計をみると、むしろTEのグレードがよい方が妊娠率のいいことが示されていました。
当院では、ETの優先順位を、コンピュータ・プログラムを用いて判定しているのですが、帰国後すぐの会議で、このプログラムを修正することに決まりましたので、ご報告を申し上げます。
他に印象に残ったのは、海外と比べて日本における受精卵の凍結技術の高さでした。
日本人は手先が器用だとよく言われますが、受精卵の凍結には細かい作業が要求されるので、日本における培養士の技術の高さもその一端を担っていると自負しています。
今後は、当院における凍結胚移植のテクニックについても、海外の学会で発表していければと思っているところです。