医師の船曳美也子です。
厚労省検討会が、不妊治療の公費助成対象を「43歳未満」とすることに、7月29日合意したと発表されました。現在、最大10回みとめられている助成回数は、6回までとされます。
それまでの移行期間を何年にするかを次回会合できめる予定です。
まず現状は各自治体で多少異なりますが、大阪市の不妊治療助成金ですと、
夫婦所得の合計が730万円未満の方を対象に、体外受精治療に対し、初年度のみ3回、次年度から年2回、(治療終了日が3月31日までが同年度になります。)
新鮮胚移植なら1回15万円、融解胚移植なら1回7万5000円を、通算5年で通算10回までが認められています。
新しい助成規制の変更点として、
- 対象は43歳未満。
- 開始年齢が40歳以上の場合は、通算3回まで。
- 開始年齢が40歳未満の場合は、通算6回まで。
が制限として加わりますが、
- 通算5年→42歳まで。
- 年2回まで→年何回でも。
と、治療期間や1年あたりの回数の制限はなくなる予定です。
43歳未満案が採択された理由として、統計上
- 妊娠率が年齢とともに低下すること
- 43歳以上では流産率が50%をこえ、出産率が1/50になること
- 周産期死亡率(分娩時の胎児・新生児死亡、妊産婦死亡)が増えること
が理由に挙げられていました。(読売新聞より抜粋)
たしかに、1~3の理由は統計上に認められますが、年齢での変化は個人差も大きく、すべての人が、43歳になったから急にリスクがあがるわけではありません。
(厚労省検討委員会の10年間延べ約24万件の不妊治療のデータでは、体外受精1回で出産にいたった確率は32歳までで約20%。33歳以上で徐々に低下し、40歳で7.7%、41歳で1.3%。)
ただ、年齢により、治療効果が落ちるからという理由で、公費を制限していいのでしょうか?
同じ公的資金でも、健康保険による治療には年齢制限はありません。
70歳の人は肺炎の治療をするが、80歳の人にはしませんというわけにはいきません。
進行癌を治療する時、ステージが進んでいて予後不良だからといって、ガン治療に健康保険が使えない、ということにはなりません。
不妊治療は「生命」を産む治療です。公の予算にも限界があるとはいえ、同じ資金を投入するにしても、今後の少子化問題もありますし、より「生命」を作る不妊治療に力をいれるべきだと思います。
また、こういう数字が新聞にでることで、30代の方々には、不妊治療を急がなくては、と思ってほしいですが、43歳で妊娠した私としては、40代の方々には、だからといってあきらめないで、といいたいです。
出産できる確率は数%であっても0%ではないのですから。
これは、余談ですが、30代の方で、急がないといけないのはわかっても、相手がいないという方には、卵子凍結という選択肢もあることを知っておいていただきたいと思います。
そして、女性手帳のように、妊娠出産の時期などの個人的な決定について、国家が干渉するような政策だけは避けてほしいと思うのでした。