少し前に、風疹の流行が報告されていましたが、まだ、風疹の流行は続いているようです。
ウィルス感染は、ワクチン接種を受けて、抗体を持つことができれば、防ぐことはできるのですが、副反応の報告もあり、なかなか全国民接種というわけにはいかないようです。
さて、その他にも人に大きな害を及ぼすウィルスとして、麻疹、水痘、流行性耳下腺炎などがあります。特に、男性不妊に関するウィルスとして、流行性耳下腺炎があります。
名前のとおりその症状は首にある耳下腺という部分が腫れるのですが、その他、発熱、膵炎、精巣炎などを起こします。思春期以降に精巣炎を起こすと男性不妊の原因となります。
ところが、先日のアンドロロジー学会で発表があったのですが、今までは流行性耳下腺炎に罹患すると高率に造精機能が傷害されるといわれていたのですが、実際には造精機能が障害されることはまれではないかとの報告でした。
例外的に、精巣の栄養血管に炎症が広がり、血流の減少が起こった場合、精巣の萎縮をきたし、また精管の閉鎖が起こる等の場合、無精子症になると考えられるとのことでした。(岡田宏、独協医科大学 越谷病院 泌尿器科)
これらのことを解釈すると、思春期以降で流行性耳下腺炎に罹患し、精巣に疼痛や腫脹などの症状がでる場合、無精子症になることがあるが、造精機能は6ヶ月後には回復する。そのため、精巣のサイズや内分泌的に異常がなければ、流行性耳下腺炎後無精子症になったとしても、精巣内精子回収術にて、精子の回収が可能であるとのことになります。
以前の報告では精巣炎を起こした場合は20%に非閉塞性無精子症が起こるとされていましたが、流行性耳下腺炎による精巣炎でも造精機能は数ヶ月で回復します。
流行性耳下腺炎の罹患を避けるに越したことはないと思うのですが、罹患して無精子症になったとしても、精巣からの精子の回収はでき、不妊治療を行える可能性は十分あると思われます。