不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?…その2 温経湯

不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?…その2 温経湯

医局カンファレンスです。

前回お話した1. 当帰芍薬散は、不妊症に冷え症の方が多いことからその冷え症を改善させていく薬剤として、まず使用されることの多い薬剤とされています。

今回は、2. 温経湯についてみていきます。

温経湯は、冷え症の中でも上半身が温かく唇などが乾燥し下半身が冷えるときに使用していきます。上半身と下半身のバランスをよくしていきます。含まれる生薬も温める生薬と熱を取る生薬が含まれています。

当帰(トウキ)セリ科のトウキ属植物の根を乾燥したもの。
血液の循環を良くします。
芍薬(シャクヤク)ボタン科シャクヤクの根茎を乾燥したもの。
筋肉の痙攣を和らげ 血管の状態を良くします。
川芎(センキュウ)セリ科センキュウの根茎を湯通しし乾燥したもの。
血行を促進します。
半夏(ハンゲ)サトイモ科カラスビシャクの球茎を乾燥したもの。
体を温め、停滞しているもの(痰など)を取り除きます。
甘草(カンゾウ)マメ科カンゾウ属植物の根や根茎を乾燥したもの。
緊張を緩和させます。
桂皮(ケイヒ)クスノキ科トンキンニッケイの樹皮を乾燥したもの。
停滞した水分などを取り除きます
人参(ニンジン)ウコギ科チョウセンニンジンの根を乾燥したもの。
体を温め新陳代謝をよくし、(胃)の衰弱を改善させます。
牡丹皮(ボタンピ)ボタン科ボタンの根の皮を乾燥したもの。
血中の熱を冷まして整えていきます。
生姜(ショウキョウ)ショウガ科ショウガの根茎を生のまま用いたもの。
体を温め新陳代謝を高めていきます。
麦門冬(バクモンドウ)ユリ科ナガバシャノヒゲの根の芯をとったもの。
心臓の働きを良くし、余分な水分を排泄させ、熱を冷まします。
呉茱萸(ゴシュユ)ミカン科ゴシュユの果実を乾燥したもの。
体を温め冷えによる痛みなどを改善していきます。
阿膠(アキョウ)ロバの皮を水で加熱し抽出して得られるゼラチン質。
血液機能を高め 新陳代謝を促進します。

当帰芍薬散と重なる生薬もありますが、下半身の冷えによる月経不順や不妊症だけでなく上半身の乾燥を潤しながら、胃の調子を整えていきます。
温経湯のホルモンへの作用や効果について、これまでの報告をみていきます。
ラットにおいて、視床下部からのLH-RH(下垂体を刺激するホルモン)の分泌、下垂体からのLHおよびFSH(卵巣を刺激するホルモン)の産生ならびに分泌の増加が認められています。

ヒトでは、LHの律動性分泌が改善し、LH分泌が正常化することが報告されています。
クロミッドとの併用により、排卵率・妊娠率の上昇する報告があります。多嚢胞性卵巣症候群では血中LHは上昇していますが、温経湯によりLHが正常化し排卵と月経周期が回復しています。
体外受精においても、上記のような症例に対し、温経湯を併用しています。

冷えには当帰芍薬散や温経湯だけでなく、程度やその他の症状により当帰四逆呉茱萸生姜湯などを使用します。
次回は、桂枝茯苓丸の予定です。