慢性子宮内膜炎…その11

慢性子宮内膜炎…その11

医局カンファレンスです。

進展がありましたので、報告します。

慢性子宮内膜炎の特徴は、子宮内膜への形質細胞の侵入です(2011-02-23以後の各ブログ記事もご参照ください)。
形質細胞は、免疫グロブリン(immunoglobulin、以下Ig、別名:抗体)を作るリンパ球の一種です。Igには9種類あることが現在知られています。
今回、慢性子宮内膜炎組織の形質細胞がどのタイプのIgを作るのか調べてみました。

この調査に至ったきっかけは、4-5年前に、ある研究会で慢性子宮内膜炎について発表したところ、
「この形質細胞がIgG4を作るかどうか教えてほしい。
慢性子宮内膜炎とIgG4関連疾患の関係について是非調べてほしい。」
との指摘を受けたことに始まります。

IgG4関連疾患??
このとき初めて耳にした病名です。
IgG4は上述の9種類のIgのひとつです。
IgG4関連疾患は、日本ではじめて報告され、その後世界へ発信された難病です。
診断基準も日本のものが国際的に有名で、特定の臓器の肥大と繊維化、血液中のIgG4の増加、臓器へのIgG4 陽性形質細胞を特徴とします。

折角の機会と、今回9種類のIgについてスクリーニングしました。
これまでに調べた約30の慢性子宮内膜炎組織の中には、IgG4陽性形質細胞は認めていません。
繊維化像を示した内膜もありませんでした。
慢性子宮内膜炎とIgG4関連疾患とは無関係と考えており、ひとまずご安心いただいてよいです(注1)。
他の研究者の追試を待ちたいと思います。

(注1)この内容はASRM2013で講演しました。
ほかのIgの結果も含めて、あらためて詳細を報告したいと思います。