医局カンファレンスです。
これまでにお話した1.当帰芍薬散、2.温経湯は、日本漢方で言う実証・虚証のうち、虚証の時に使用する頻度の多い薬剤ですが、桂枝茯苓丸は、実証の時に使用しやすい薬剤です。
また、桂枝茯苓丸は 駆瘀血剤の主たる薬剤の一つで、血流を良くしていきます。
卵巣を刺激するホルモンを分泌する臓器や子宮・卵巣への血流が良くなれば、妊娠にもつながるということが、イメージしていただけると思います。
桂枝茯苓丸に含まれる生薬をみていきます。
桂枝(ケイヒ) | クスノキ科トンキンニッケイの樹皮を乾燥したもの。 停滞した水分などを取り除きます。 |
茯苓(ブクリョウ) | サルノコシカケ科マツホド菌の菌核を乾燥したもの。 利尿作用を高め 体力を増強させます。 |
芍薬(シャクヤク) | ボタン科シャクヤクの根茎を乾燥したもの。 筋肉の痙攣を和らげ 血管の状態を良くします。 |
牡丹皮(ボタンピ) | ボタン科ボタンの根の皮を乾燥したもの。 血管の熱を冷まして 整えていきます。 |
桃仁(トウニン) | バラ科モモの種の殻をとり 日干しにしたもの。 炎症を抑え 血液を流れやすくします。 |
桂枝茯苓丸は 上半身への血流の偏りがあり顔面にほてりがある瘀血状態に対し、駆瘀血剤として作用し、血流を良くして下肢の冷えも改善していきます。
子宮筋腫を伴う不妊症の方に使用しやすい漢方薬です。
桂枝茯苓丸のホルモンに対する作用を見てみます。
間脳・下垂体の活性化により 卵巣機能を改善すると考えられています。
最近では 卵巣に対する直接的な作用が確認されてきています。
桂枝茯苓丸は、実証(比較的体力のある方)に対して使う頻度が多いのもあると思いますが、体外受精までステップアップする以前の症例で、温経湯、当帰芍薬散に比べ 妊娠率が高いという報告があります。
また、はじめは虚証に対し当帰芍薬散を使用し、体質が変化し実証となり、桂枝茯苓丸を使用し、妊娠が成立する症例も見られます。
次回は 加味逍遥散のお話をさせていただく予定です。