医師の船曳美也子です。
Value of antimullerian hormone as a prognostic indicator of in vitro fertilization outcome David E. Reichman,Fertility &Sterility 2014 0015-0282 より
AMHは、一般的には「卵巣年齢の検査」として知られています。
体外受精においては、AMHは、測定時点で発育することができる卵胞の数に相関します。
AMHが低いと、刺激しても発育する卵胞の数が少ないと予想され、AMHが高いと卵巣過剰刺激症候群を起こしやすくなります。
今回は、NewYorkのWeill Cornell Medical Centerで2010年から3年間2760人の1回目の採卵周期の結果とその1年以内に行ったAMHの値を調べています。(以下AMHの単位はng/ ml FSH の単位はmIU/mlです)
この論文での結果は、
- AMHは採卵できた卵子数と相関した。
- 同じ年齢では、AMHが増えると採卵数は増え、同じAMHでは、年齢が高くなると採卵数は減った。
- AMHが0.74未満であれば、刺激しても発育卵胞が2個以下でキャンセルになる率がふえ、AMHが0.17未満のキャンセル率はAMHが2.0以上の13.3倍になる。
- 3個か4個発育させるには、AMHが0.83は必要と考えた。
- AMHは妊娠を予測できるものではなく、たとえAMHが測定不可の低値でも40歳未満であれば23.5%の方が出産まで至った。
つまり、AMHをカウンセリングに使う場合、例え低くても、年齢が若ければ出産まで至る可能性は十分あるので、希望を失わせないように注意しましょう、と結論でした。
AMHの結果と、IVFで卵巣刺激に反応した卵胞数の相関をしめす報告は多くあります。
今回のデータでも、加齢により減少しますが、同じ年齢群では、獲得卵子数はAMH値に比例していました。
卵子数が15個までは、その周期の獲得卵子数と生産率は相関するという報告がありますので、AMHが高いと生産率が高くなってもよさそうですが、AMHと生産数の間に相関はありませんでした。
そして、AMHが低いと妊娠、出産率が低いかというと、それもやはり相関せず、AMHが低くてもFSHが低ければ出産の可能性は十分ある。しかし、AMHが0.17未満でFSHも10を超えると卵子が獲得できるかどうか、という数字でした。
AMH値は人種により差があり、発育卵胞数が同じでも、AMHの値は、黒人が白人より25%も低く、また黄色人種も白人より低いことが報告されていますので、この数字だけをIVF刺激法の選択の基準にはできないとは思いますが、今後の治療方針を考えるうえでは参考になる数字だと考えています。