医師の船曳美也子です。
Effects of dehydroepiandrosterone on in vivo ovine follicular development A.Narkwichean University of Nottingam,UK Human Reproduction vol.29, No.1 pp.146-154,2014
DHEA(dehydroepiandrosterone)は、testosteroneの10%程度の弱い男性ホルモン作用をもつステロイドで、主に副腎皮質と、卵巣からも少し分泌されています。男性ホルモンや女性ホルモンの前駆物質です。
DHEAはDOR( a diminished ovarian reserve 卵巣予備力低下)の方、つまり卵巣刺激しても発育卵胞数が少ない方に対し投与することで、卵巣の反応を改善させ卵胞数を増やす効果があります。
しかし、DHEAがfolliculogenesis卵胞形成にどう作用しているか、生体でのデータがありませんでした。
今回、はじめて羊の実験で、DHEAの働きを確認しています。
方法は、雌羊にDHEAを10週間投与し、投与前と投与後で、卵巣内の組織を調べます。
調べるものは、
1 )各ステージの卵胞数
2 )AMH分泌している卵胞数とその分泌程
3 )Ki-67染色で顆粒膜細胞の増殖程度
を調べました。
すると、DHEA投与前にくらべ、投与後の卵巣では、1 )2 )3 )となりました。
1 )
Primodial follicleがへり、primary follicle, small antral follicleの増加があった。
2 )
AMH分泌はもともとthe primary/tertiaryからではじめ、preantralfollicleとsmall antral follicle(<2.5mm)でピークになっていたが、DHEA投与後は、preantral follicleとsmall antral follicleでAMH分泌する細胞数も増え量が約4倍になった。
3 )
DHEA投与でsmall antral folliclesの顆粒膜細胞の増殖が7倍と顕著になった。
考察として、
- DHEAは、primordial follicleを始動させ、preantral follicleの数をふやすことで、結果、antral follicle数を増加させる。
- DHEAはpreantral , small antral follicleでAMHの分泌を増やした。
- 男性ホルモンの受容体は、卵巣のすべての卵胞、とくにpreantral follicle,small antral follicleの顆粒膜細胞に強く発現している。他の研究より、正常なpreantral follicleの発育には男性ホルモン受容体を介した男性ホルモン作用を必要としており、少ないと卵巣の加齢を促進したり、過剰であるとPCOSとなる、ことが知られている。
- 今回のAMHやKi-67染色によって、DHEAは質的にも量的にも顆粒膜細胞の増殖を、特に、small antral follicleで高めることがわかった。
結論として、
- DHEAはpreantralやearly antralといったgonadotropinに反応する卵胞群に作用し、これらの卵胞数を増加させ、また、それらの細胞からのAMH分泌も増加させる。
- よって、DORの方のIVF前にDHEA投与するとgonadotropinに反応する卵胞が増えると考えられる。
しかし、卵胞の質に与える影響は特に今回はなかった。
今までも、卵胞発育数が少なかった方やAMHが低い方に、DHEAを処方させていただいていますが、詳細を述べると以上のような機序になっているわけです。
ちなみに、卵胞発育は
Primodial → Primary → Secondary → Preantral → Small antral → Large antral follicle
という順番に発育します。