不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?…その5 八味地黄丸

不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?…その5 八味地黄丸

医局カンファレンスです。

女性の年齢的変化について、漢方の古典である『黄帝内経』では7の倍数で表しています。

14歳 : 月経が始まる。
21歳 : 体格は頂点に達する。
28歳 : 筋骨が引き締まり毛髪が豊かになる。
35歳 : 身体の機能が衰え始める。
42歳 : 身体機能がさらに衰える。
49歳 : 閉経

2013年に発表された統計では 女性の平均寿命は86.4歳となり、年齢を重ねても活動的な女性が増えています。しかし 同じ年齢の方でも個人差はありますが、生殖機能についてはあまり変化はないようです。

近年では結婚年齢は上昇し、35歳以上で妊娠・出産を考える方が多くなってきています。

八味地黄丸は、漢方でいう腎(泌尿生殖器)の働きを高めていきます。
加齢は”腎虚”とも考えられており、原因不明な高齢不妊に対し八味地黄丸や八味丸を処方していきます。

少し男性についてお話しすると、男性は8の倍数で身体的に変化することが記されており、40歳から体力が衰え始めるとされています。高齢男性不妊の場合も、腎虚を考えて八味地黄丸や牛車腎気丸、あるいは補中益気湯が用いられています。

八味地黄丸に含まれる生薬についてみていきます。

地黄(ジオウ)ゴマノハグサ科ジオウ属の根茎。
血液をさらさらにし、造血・循環をスムースにして
弱った状態を健康体に戻していきます。
山茱萸(サンシュユ)ミズキ科サンシュユの種子を取り除き乾燥させた果肉。
足腰の痛みやめまい、性機能低下、頻尿などの治療に用いられ
八味地黄丸の主な働きをしています。
山薬(サンヤク)ヤマノイモ科ヤマノイモの皮を薄くむいて乾燥したもの。
消化吸収を促進・抗酸化作用による老化防止・免疫能の増強など、
滋養・強壮・止瀉薬として利用されています。
茯苓(ブクリョウ)サルノコシカケ科マツホド菌の菌核を乾燥したもの。
利尿作用を高め 体力を増強します。 
沢瀉(タクシャ)オモダカ科サジオモダカの根茎を乾燥したもの。
水分代謝を調節し、むくみをとっていきます。
牡丹皮(ボタンピ) クスノキ科トンキンニッケイの樹皮を乾燥したもの。
停滞した水分などを取り除きます。 
附子(ブシ)キンボウゲ科シナトリカブトの子根を乾燥したもの。
体を温め 新陳代謝を高めていきます。

八味地黄丸の効果について 国内での報告を見てみます。
平均年齢39歳から41歳の生殖補助医療を受けている女性に、八味地黄丸や八味丸を投与して体外受精を行ったとき、発育卵胞数・回収卵子数・受精卵数・Day2の初期胚到達率が妊娠した症例では妊娠しなかった症例に比べ、有意差はないものの増加傾向を示したという報告があります。

また、比較的受精卵の状態が良くても妊娠に至らない着床不全の症例に八味地黄丸を投与し、妊娠率が上昇した報告もあります。

次回は 補中益気湯についてお話させていただく予定です。