医師の船曳美也子です。
今日は、細胞についているタイマーについての話です。
体のなかの細胞は、自分のコピーを複製したり、死んだりということを行っています。細胞は、自分をコピーするときに、細胞についたタイマーが少しずつ短くなっていき、タイマーが0になるとき細胞は死にいたります。
このような細胞寿命のタイマー的役割をするものをテロメアといい、植物、動物、真菌など幅広い生物の細胞の染色体の末端に存在し、その生物学的年齢を調整しています。
テロメアが長い細胞の寿命は長く、短い細胞は短命というわけです。
また、人間では、テロメアが短縮すると、加齢にともない増える疾患、すなわち、癌や、心血管病変、糖尿病、認知障害、抑鬱、低免疫状態になりやすくなります。
このように、テロメアは、細胞の寿命を決めるだけでなく、テロメアの短さと細胞の老化が関係しているといわれています。今回の論文では、卵細胞のテロメアが短くなること、が卵子老化の引き金であるという仮説を提唱しています。
ねずみは、もともとテロメアが非常に長く、卵子の老化現象はみられません。
が、ねずみのテロメアを短くすると、人間の卵子と同様の加齢現象を起こしました。
具体的には、ねずみのテロメアを短くすると、減数分裂時の相同染色体の対応点であるシナプスや交叉キアズマの減少をおこし、ねずみ受精卵の胚の形態は悪くなり、細胞分裂を停止し、紡錘体の形態異常や、染色体異常を起こしてしまいました。
人間の場合、IVFで採卵した卵子で調べると、形態不良や染色体異常の胚のため移植できなかった卵子のテロメアは短かったようです。
このテロメアを長く保つ方法、つまり細胞老化を予防する方法はないのでしょうか?
実は、テロメアを短くさせる要因は三つ、遺伝、酸化ストレスを生む環境、そして精神的ストレスです。
なので、細胞老化を予防するには、酸化ストレスや精神的ストレスを減らすこと、が有効です。
酸化ストレスは、過度の紫外線、肥満、過度の糖質や脂質、喫煙で増えます。
なので、これらを避けること、また、酸化ストレスを減らせるのは、運動、質のよい睡眠、ω3脂肪酸を含む食事(鮭、あじ、いわしなどの魚や緑黄色野菜)が良いとされます。
老化した卵子を若返らせる技術はまだ開発中ですが、今できる老化を遅らせる対策は、「野菜や魚を食べて、よく歩き、ぐっすり寝て、笑うこと」。そういえば、明るい長寿姉妹で有名だった「金さん、銀さん」も、そんなこといってたな~と思いだしました。
今日から、少しでも何かできそうなことを、自分なりにやってみましょうね。