不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?…その6 補中益気湯

不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?…その6 補中益気湯

医局カンファレンスです。

健康の維持には、消化器官の働きが良くなり代謝が活発になることが大切と考えられます。補中益気湯の「中」は中焦(みぞおちから臍)を示しており、胃や脾臓の働きを良くする働きがあります。
健康になって妊娠・出産できる体質にしていくことが期待できます。

補中益気湯は別名“医王湯”とも言われています。

疲労倦怠感のある方・虚弱体質の方にまず使っていただきたい漢方薬です。六君子湯も胃腸の働きを回復させていく漢方です。
また、補中益気湯は男性不妊にも使用されています。

補中益気湯に含まれる生薬についてみていきます。

人参(ニンジン)ウコギ科チョウセンニンジンの根を乾燥したもの。
体を温め新陳代謝を良くし、衰弱した胃の働きを改善させます。
朮(ジュツ)キク科オケラの根茎を乾燥したもの。
体内の水分代謝を調節します。
黄耆(オウギ)マメ科ゲンゲ属キバナオウギの根を乾燥したもの。
抹消血管を拡張し循環を良くし、免疫力を高めます。
当帰(トウキ)セリ科トウキ属植物の根を乾燥したもの。
血液の循環を良くします。
柴胡(サイコ)セリ科ミシマサイコの根を乾燥したもの。
ストレスを解消し、自律神経の働きを良くします。
陳皮(チンピ)ミカン科ウンシュウミカンまたはマンダリンオレンジの皮を乾燥させ1年以上たったもの。
消化を良くし、食欲を増進させます。
大棗(タイソウ)クロウメモドキ科ナツメの果実を乾燥したもの。
体を温め緊張を緩和します。過剰な消化管の運動を抑制します。
生姜(ショウキョウ)ショウガ科ショウガの根茎を生のまま用いたもの。
体を温め 新陳代謝を高めていきます。
甘草(カンゾウ)マメ科カンゾウ属植物の根や根茎を乾燥したもの。
緊張を緩和させます。
升麻(ショウマ) キンボウゲ科サラシナショウマの根茎を乾燥したもの。
解毒、解熱、止血作用があります。

不妊症では虚証の割合が高く、当帰芍薬散や温経湯などが用いられます。
しかし、胃腸虚弱な方では、それらの漢方でも胃腸障害が起きることがあります。このような場合には胃腸を丈夫にし、全身状態を改善させることが必要で、補中益気湯を用います。

統計的に比較検討された報告は今回は見つかりませんでしたが、食欲不振で全身倦怠感がある原因不明の不妊症の方は、まず妊娠できる体質・妊娠を維持する体力を備えることが大切と思われます。