レズビアン女性の妊孕性

レズビアン女性の妊孕性

医師の田口早桐です。

“Sexual orientation of women does not affect outcome of fertility treatment with donated sperm” Human Reproduction, Vol.29, No.4 pp.704-711, 2014 より。

提供精子による人工授精をした場合、レズビアンとそうでない女性(heterosexual)との間で、結果に差が出たかどうか、という論文です。
結果は、「統計的有意差なし」でした。

スウェーデンからの報告です。今までレズビアン女性の妊孕性に関する報告は非常に少ないのですが、その中では、レズビアン女性では喫煙、肥満、性感染症、が多いとか(全て妊娠には悪い影響を及ぼします)、多嚢胞性卵巣が多いとか(これも主要な不妊原因の一つです)いう報告がありました。
ただ、本当に妊娠のしやすさが違ってくるのか、ということをここまで大規模に調べたデータはなかったようです。この論文では、124人の異性愛女性と168人の同性愛女性についてのライフスタイルデータ、妊娠率、子供を一人授かるまでにかかった治療回数について比較しています。

結果、レズビアン女性に喫煙、肥満、性感染症が多いということは、ありませんでした。
多嚢胞性卵巣の割合も、有意差はありませんでした。
そして、妊娠率や子供を得るまでの治療回数についても、有意差がありませんでした。
治療内容別(排卵誘発法別)にも検討していますが、いずれにおいても有意差は認められませんでした。

つまり、今回の報告を踏まえると、不妊治療を希望する女性においては、レズビアンかどうかは治療前の状態及び治療の内容や結果において、全く関係ないものとして扱ってよい、ということが分かりました。