マイクロRNAから子宮内膜の胚受容能を予測できるか?

マイクロRNAから子宮内膜の胚受容能を予測できるか?

医局カンファレンスです。

前回、胚が作るマイクロRNAの話を紹介しましたが、引き続いて子宮内膜のマイクロRNAに関して報告がありました (Kresowik JDK et al., Biol Reprod, in press)。

まず着床期の子宮内膜では、排卵前の子宮内膜に比べてmiRNA-30b, -30d, -31, -203の4種類がより多く、miRNA-503 と -145の2種類がより少なく存在することが明らかになりました。
このうちmiRNA-31 は着床期の血液中にも沢山ありました。

microRNAデータベース検索からmiRNA-31が関係する遺伝子としてFOXP3、CXCL12、selectin Eが浮かび上がりました。子宮内膜のmiRNA-31の量が多いサンプルほど、FOXP3、CXCL12の遺伝子の発現量は少ないことが分かりました。selectin Eも同じ傾向を示しましたが有意差には届きませんでした。

この3つの遺伝子に大変興味を持ちました。いずれも免疫に関わるタンパク質です。

以前にわれわれは正常な着床期子宮内膜ではCXCL12、selectin Eは蛋白として作られないこと、また慢性子宮内膜炎でselectin Eが出現することを報告しています(Yasuo T and Kitaya K. Fertil Steril. 2009;92:709-721.; Kitaya K et al., Mod Pathol, 2010;23:1136-1146)。

以上から着床期の子宮内膜ではmiRNA-31の量が増加し、FOXP3、CXCL12、selectin Eの合成を抑えて胚の着床に有利な環境を作り出している可能性があります。
排卵後のmiRNA-31の増加は、血液でも検出可能なようですので、胚着床期を予測する分子として、診療に将来利用できるかもしれません。