医師の船曳美也子です。
OHSS予防に「ドーパミン受容体刺激作用薬」の「カルベゴリン」を使用することを前回のブログで紹介しました。
カルベゴリン(ドーパミン作動薬)がOHSS対策に有効なのは、ドーパミンがVEGFの作用を抑制しているため(ドーパミンがVEGF-VEGFRカスケードを阻害している)でしたね。
つまり、視床下部のドーパミンが少ないとOHSSになりやすい。
ところで、PCOSは視床下部でドーパミン作動性が低いことがわかっています。
ですから、PCOSはOHSSになりやすい。
視床下部のドーパミン分泌が低くなりますと、高プロラクチン血症になりますが、高プロラクチン血症はOHSSになりやすいか?というと、そうでもなく、高プロラクチン血症がLHの分泌を抑制するため、OHSSは抑制的になりそうです(*1)。
では、PCOSと高プロラクチン血症の間には病態生理的関係があるのかないのか?
2010年の台北の論文では、それぞれLH分泌のパタンが異なるから全く違う病態であるとし(*2)、2011年のフランスの論文では、高プロラクチン血症はLH分泌を抑制することで内在するPCOSをマスクするものである(*3)、と述べています。
PROLとHPRLの関係は、まだミステリーのようです。
*1 Prolactin’s role in the occurance of the ovarian hyperstimulation syndrome Journal of Experimental Medical & Surgical Researh 2/2010 p77-83
*2 Polycystic ovary syndrome or hyperprolactinaemia : a study of mild hyperprolactinaemia Gynecological Endocrinology, Janualy 2011;27(1):55-62
*3 Physiopathological link between polycycstic ovary syndrome and hyperprolactinemia:myth or reality?
Gyneclo Obstet Fertil 2011 Mar;39(3):141-5.