医師の田口早桐です。
Effect of preovulatory progesterone elevation and duration of progesterone elevation on the pregnancy rate of frozen-thawed embryo transfer in natural cycles
Fertility and Sterility Vol.101, No.5, May 2014
刺激周期において採卵前に、通常は排卵後に分泌されるホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン:以後Pと書きます。)が高いと、妊娠率が下がる、ということが言われています。
だから、刺激して採卵した周期に新鮮胚の移植はせずに凍結しておき、次の自然周期にそれを融解胚移植すれば、その影響を受けずに済む、と述べている論文もあります。
この論文では、刺激周期で採卵したあとの融解胚移植をおこなった自然周期において、排卵前のPの値はどうなのか、ということ、またP上昇があったときの妊娠率に対する影響を調べています。
排卵3日前くらいから排卵までのP値を測っています。
自然周期の排卵前にP上昇がみられた数は全体の26%でした。統計処理すると、P上昇自体は妊娠率に影響を及ぼしませんでした。
ただ驚いたことに、P高値が2日以上続いた場合、有意に妊娠率を下げる、という結果が得られました。
なんと3日続くと0%になりました。もしPを測ってこういう状態だと、絶対に胚移植してはいけませんね。
このことから、子宮内膜がPの影響を受けて、着床しないように変化してしまうということ、短時間なら影響も少ないが、それが続くともう着床不可能な状態になってしまうということ、が言えると思います。
また、この着床率の劇的な減少が、子宮内膜からだけ引き起こされているのかどうか、今後の更なる検討が必要でであると思われます。