医師の田口早桐です。
Alcohol and male reproductive health: a cross-sectional study of 8344 healthy men Europe and the USA Human Reproduction, Vol.29, No.8pp.1801-1809, 2014
不妊治療をしている際に特に精子の所見に問題があるときなど、男性側から生活改善のアドバイスを求められることがよくあります。
タバコが良くないことは分かっていますし、極端に偏った生活は避けたほうが良いのはもちろんですが、睡眠時間や食事など生活上の注意点は多岐にわたり、精子の所見や妊孕性に対する影響を評価するのは大変難しいのが現状です。
今回の論文では、アルコールの摂取量と精液所見及びホルモン値との関係を調べています。
不妊治療を受けているカップルの男性についての調査ではなく、あくまで、一般の若年男性(グループA:6472人)と、妻が妊婦検診を受けている(つまり妊娠が成立することが分かった)男性(グループB: 1872人)での精子を調べているので、偏りが少ないと言えます。
結果は、驚くべきことに両方のグループで、アルコール摂取量が多いほど、精子の運動率が高く、テストステロン(男性ホルモン)値が高いことが分かりました。
アルコールを週に20ユニット以上摂取するグループが最も精子運動率及び男性ホルモンが高かったのです!
ちなみにアルコール1ユニットはワインならグラス1杯。20ユニットというとボトル3本というところ。
いかがでしょうか?え?
もっと飲んでるって?
そうなら、精子の運動率もばっちりで、男性ホルモンもばんばん出ているはず。
ちなみに、なぜそうなのか?
一つには、肝臓でアルコールを解毒することで、肝臓内でのステロイド(男性ホルモンのもとになる)の代謝が変わるという説と、もう一つは、単にアルコール消費量が多い男性はいわゆる「リスクテイカー」タイプ、つまり積極的で男性的なタイプで、それゆえに精子も元気で男性ホルモンも多いのだ、という説があります。
個人的には後者の可能性が高い気がしますけど、周りを見回して、いかがでしょうか?