不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?…その7

不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?…その7

医局カンファレンスです。

柴苓湯は小柴胡湯と五苓散の合方です。

小柴胡湯が主な役割を示していると考えられており、食欲不振や胃炎、急性熱性疾患などに使用されています。

五苓散は、尿量が少なく、嘔吐、下痢、むくみ、頭痛などの症状に用いられます。

柴苓湯は、肝鬱気滞(気うつ)や水毒に効果があり、以前より産婦人科では、自己免疫異常を伴う不育症や妊娠高血圧症候群に使用されており、最近では、不妊症に応用されています。

柴苓湯に含ませる生薬をみていきます。

柴胡(サイコ)セリ科ミシマサイコの根を乾燥したもの。
ストレスを解消し、自律神経の働きを良くします。
黄芩(オウゴン)シソ科コガネバナの根の皮をむき乾燥したもの。
肺腸の炎症をとり、利尿作用があります。
半夏(ハンゲ)サトイモ科カラスビシャクの球茎の皮をむいて乾燥したもの。
胃に貯留した水分の排泄促し、代謝をよくします。
人参(ニンジン)ウコギ科チョウセンニンジンの根を乾燥したもの。
体を温め新陳代謝をよくし、(胃)の衰弱を改善させます。
甘草(カンゾウ)マメ科カンゾウ属植物の根や根茎を乾燥したもの。
緊張を緩和させます。
大棗(ダイソウ)クロウメモドキ科ナツメの果実を乾燥したもの。
体を温め、緊張を緩和します。過剰な消化管の運動を抑制します。
生姜(ショウキョウ)ショウガ科ショウガの根茎を生のまま用いたもの。
体を温め新陳代謝を高めていきます。
沢瀉(タクシャ)オモダカ科サジオモダカの根茎を乾燥したもの。
水分代謝を調節し、むくみをとっていきます。
朮(ジュツ)キク科オケラの根茎を乾燥したもの。
体内の水分代謝を調節します。
猪苓(チョレイ)サルノコシカケ科チョレイマイタケの菌核を乾燥したもの。
炎症を抑え利尿作用があり、抗腫瘍作用があるとされています。
茯苓(ブクリョウ)サルノコシカケ科マツホド菌の菌核を乾燥したもの。
利尿作用を高め、体力を増強させます。
桂枝(ケイシ)クスノキ科トンキンニッケイ樹皮を乾燥したもの。
(日本漢方では桂皮を桂枝として使用している)スパイスの シナモンとして使用されている。
身体を温め血行を良くし さらに利尿をたすけます。

柴苓湯は 柴胡剤でストレスを緩和する作用があり、ストレスの多い不妊治療に用いるのによいとされています。また、内因性ステロイドホルモン様作用があると言われています。

柴苓湯のホルモンに対する作用を見てみます。
多のう胞性卵胞症候群に対し使用し、血中LH値の有意な低下を認め排卵率が上昇した報告があります。

高FSH性不妊症の場合、なんらかの自己免疫作用による原始卵胞消失と考え、内因性ステロイド様作用を期待し使用され、FSH値の有意な低下を示し、7例中1例が妊娠成立した報告があります。

西洋学的不妊治療に漢方薬を併用し さらによい結果が得られることを期待しています。