医局カンファレンスです。
柴苓湯は小柴胡湯と五苓散の合方です。
小柴胡湯が主な役割を示していると考えられており、食欲不振や胃炎、急性熱性疾患などに使用されています。
五苓散は、尿量が少なく、嘔吐、下痢、むくみ、頭痛などの症状に用いられます。
柴苓湯は、肝鬱気滞(気うつ)や水毒に効果があり、以前より産婦人科では、自己免疫異常を伴う不育症や妊娠高血圧症候群に使用されており、最近では、不妊症に応用されています。
柴苓湯に含ませる生薬をみていきます。
柴胡(サイコ) | セリ科ミシマサイコの根を乾燥したもの。 ストレスを解消し、自律神経の働きを良くします。 |
黄芩(オウゴン) | シソ科コガネバナの根の皮をむき乾燥したもの。 肺腸の炎症をとり、利尿作用があります。 |
半夏(ハンゲ) | サトイモ科カラスビシャクの球茎の皮をむいて乾燥したもの。 胃に貯留した水分の排泄促し、代謝をよくします。 |
人参(ニンジン) | ウコギ科チョウセンニンジンの根を乾燥したもの。 体を温め新陳代謝をよくし、(胃)の衰弱を改善させます。 |
甘草(カンゾウ) | マメ科カンゾウ属植物の根や根茎を乾燥したもの。 緊張を緩和させます。 |
大棗(ダイソウ) | クロウメモドキ科ナツメの果実を乾燥したもの。 体を温め、緊張を緩和します。過剰な消化管の運動を抑制します。 |
生姜(ショウキョウ) | ショウガ科ショウガの根茎を生のまま用いたもの。 体を温め新陳代謝を高めていきます。 |
沢瀉(タクシャ) | オモダカ科サジオモダカの根茎を乾燥したもの。 水分代謝を調節し、むくみをとっていきます。 |
朮(ジュツ) | キク科オケラの根茎を乾燥したもの。 体内の水分代謝を調節します。 |
猪苓(チョレイ) | サルノコシカケ科チョレイマイタケの菌核を乾燥したもの。 炎症を抑え利尿作用があり、抗腫瘍作用があるとされています。 |
茯苓(ブクリョウ) | サルノコシカケ科マツホド菌の菌核を乾燥したもの。 利尿作用を高め、体力を増強させます。 |
桂枝(ケイシ) | クスノキ科トンキンニッケイ樹皮を乾燥したもの。 (日本漢方では桂皮を桂枝として使用している)スパイスの シナモンとして使用されている。 身体を温め血行を良くし さらに利尿をたすけます。 |
柴苓湯は 柴胡剤でストレスを緩和する作用があり、ストレスの多い不妊治療に用いるのによいとされています。また、内因性ステロイドホルモン様作用があると言われています。
柴苓湯のホルモンに対する作用を見てみます。
多のう胞性卵胞症候群に対し使用し、血中LH値の有意な低下を認め排卵率が上昇した報告があります。
高FSH性不妊症の場合、なんらかの自己免疫作用による原始卵胞消失と考え、内因性ステロイド様作用を期待し使用され、FSH値の有意な低下を示し、7例中1例が妊娠成立した報告があります。
西洋学的不妊治療に漢方薬を併用し さらによい結果が得られることを期待しています。