医師の船曳美也子です。
本日は、この夏ワールドサッカーで話題だったブラジルからの報告です。
この論文では、36歳未満の女性の顕微授精のプロトコールに、従来のロング法と、最新のショート法を比べています。
結果は、最新ショート法は、着床率、妊娠率は変わらなかっただけでなく、必要なrFSHの注射量は少なく、平均卵巣刺激費用は安く、妊娠にいたる平均コストも安くなりました。
最新ショート法というのは、rFSH注射を月経初日から225単位→150単位→75単位→なし、と漸減法で行い、後半は同時にrhCGを微量投与します。
また排卵抑制は、GnRHaを隔日注射投与しています。この論文での薬は日本で未発売のものもありますし、私たちと同じプロトコールではありませんが、簡便でコストが安いショート法は、新興国を含めると世界中でのシェアは大きいです。
このブラジルの論文では、1回の排卵誘発の費用は、ショート法で2,397ドル、ロング法で3,197ドル。
妊娠に至るために必要だった費用は、ショート法で平均4,993ドル、ロング法で9,743ドルでした。
他の海外での1回の体外受精のコストを調べたところ、アメリカは平均12,400ドル、イギリスのプライベートクリニックで6,000~10,000ポンド(約1,037,900円)と非常に高額でした。
(イギリスの保険IVFは無料ですが、IVFを受けるまでに2年の自己タイミングと1年のAIHを受ける必要があり、しかも40才未満は3回しか、40才以上42才未満では1回しか受けられません!)
日本の医療は、その技術力やサービスに比べて、費用はデフレの影響でしょうか、世界に比べると良心的に感じました。
Pituitary suppression with a GnRHa short protocol in an alternate day schedule associated with rhCG microdoses
Rosene S. Rodrigues, Brazil JBRA 2014;18(3):76-79