培養士の高野です。
6月31日~7月2日にドイツのミュンヘンで開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に行ってきました。
今回のESHREでは胚の培養に関する発表はもちろんの事、様々な理由からドナー精子を用いたARTを行った患者様やその子供たちの声についての発表もありました。
日本とは異なり精子の提供などについて寛容であると感じられました。
また、うまく発生が進まなかった、分割が止まってしまった胚に関しても全て凍結しなければならないという国もあり、ARTにおけるルールも世界各国様々でとても面白く感じました。
今回の発表の中で特に印象に残ったものは、フランスのクリニックが発表していたバイオマーカーについての研究です。
バイオマーカーとは、生体由来の物質で、生体内の生物学的変化を定量的に把握するための指標となるもので、例えば遺伝子、たんぱく質、脂肪や糖質などの小さな代謝物なども様々な疾患のバイオマーカーの1つです。今回の発表では卵胞液中のセルフリーDNAという物質の量を測り卵の質との相関をみており、卵胞液中のセルフリーDNAレベルが低い程、卵の質が良いという結果でした。
これまで、卵に対して容易に、安価に、非侵襲的に利用できるバイオマーカーが少なかった為、とても興味深い発表でした。
当院では、毎日卵の観察をすることで最終的なステージだけでなく、発生の途中経過も考慮して胚移植の際に卵の選択を行っていますが、今後このような非侵襲的バイオマーカーが実用化されてくると移植などに向けより良質な胚の選択ができるのではないかと感じました。