IMSI(イムジー)

IMSI(イムジー)

医師の田口早桐です。

Sperm vacuoles cannot help to differentiate fertile men from infertile men with normal sperm parameter values Human Reproduction, Vol.29, No.11 pp.2359-2367, 2014

イムジー:IMSI(Intracytoplasmic morphyologically selected sperm injection)
とは、超高倍率で精子を観察して、精子の頭部、中部、尾部の形態を確認して、良好な精子を選び顕微授精に用いる方法をいいます。

普通の顕微授精は400倍に拡大して良好な精子を選びますが、IMSIでは6000倍に拡大して良好な精子を選別します。そのため400倍では見えなかった精子の頭部にある小さな空胞やその他の異常を確認できます。
顕微授精を数回してもうまくいかない症例や、精子形態が良くない症例に用いますが、精子の選別に時間がかかるのでそれによる悪影響も懸念されます。

精子の頭部にはDNA、つまり遺伝情報や受精に必要な酵素が詰まっていますから、とくに重要です。
ときどきこの部分に空胞、つまり穴が見えることがあります。
これがあるとDNAの断片化、遺伝子異常、染色体異常につながるのではないか、と言われましたが、現在のところ確固としたエビデンスは得られていません。
むしろ、空胞は精子が正常であっても普通に見られるものだということも言われています。

今回ご紹介する論文では、原因不明不妊カップルの男性と妊娠した女性のパートナーにおいて、空胞の数や状態がちがうのかどうかを調べたものです。
結果として、空胞の数や状態にこの2群間での差はない、という結果が得られました。
精液所見やDNA断片化の程度にも差がありませんでした。唯一相関が見られたのは年齢が上がるとDNA断片化が起こりやすくなる、ということでした。

当院でもIMSIは可能ですが、有用性に関する議論も多くあるので、ごく限られた症例にのみ適用しています。
この論文でも、またまた有用性が乏しいということになってしまっていますが、まだまだこれからいろいろ有用性を示唆する発表がなされるかも知れませんね。