培養士の天野です。
1/11に東京で行われた日本臨床エンブリオロジスト学会に行ってきました。
日本臨床エンブリオロジスト学会はART(生殖補助医療)の技術者集団の学会ということで、ワークショップやシンポジウムなどは実務に沿った内容が多く、一般演題も、培養・凍結の方法や、取り違え防止対策の比較検討など、実際の作業において各施設が工夫していることの発表が多かったです。
ARTの研究開発に力を入れていると最先端の技術の方に注目が集まりますが、既に確立した手技に対しても、さらに改善・改良の余地がないか常に気を配っておくことによって、培養室のレベルが上がっていくと、改めて感じました。
因みに当院の演題は、「低グレード胚盤胞の妊孕性についての後方視的検討」でした。胚盤胞はガードナー分類という分類法を用いて判定します。
胚盤胞の発育速度を1~6の6段階、将来胎児になる細胞の量と将来胎盤になる細胞の量を、A・B・Cの3段階で評価し、その組み合わせで表しますが、一般的に、3BB以上が良好とされています。
当院で行った胚盤胞移植のうち、良好胚盤胞を移植した患者さまの平均年齢は36.2歳、妊娠率は57.1%、3BB未満の低グレード胚盤胞を移植した患者さまの平均年齢は37.2歳、妊娠率は34.7%で、この2つを比較すると良好胚盤胞の方が良いという結果になりました。
しかし、低グレード胚盤胞移植の妊娠率は、37歳の移植当たりの妊娠率32.6%(日本産科婦人科学会ARTデータブック2012年)と比較して遜色の無い結果であることが分かりました。
「3BB以上の胚盤胞じゃないと移植する価値がない」という説もありますが、そういった極端な説に振り回されないようにして頂きたいと思います。