こんにちは。胚培養士の高野です。
東京で開催された第33回 日本受精着床学会 学術講演会に参加してきました。
当院からは岩木Dr.の『Kaufmann療法中に妊娠に至ったPOFの症例』と私の『胚盤胞移植の治療成績に影響する胚盤胞形態因子の探索~前向きコホート研究~』の2題を発表してきました。
各ポスターの前に配布用の資料を設置していたのですが、両題ともにすぐに配布資料がなくなる盛況ぶりで、関心の高さが伺えました。
毎回学会に行くと、その時の流行りなのか同じようなテーマがたくさん並んでいるのですが、今回の学会では私たち培養士に関するテーマとして培養液の種類や受精確認時の前核の数についての発表が多くみられました。
この前核の数については、皆様も採卵や移植の際に私たち培養士から説明を受ける際に聞くことがあるかもしれません。
通常、正常な受精ですと卵子側と精子側の全核がそれぞれ1個ずつ形成された2前核(2PN)という状態になります。
しかし、前核が1個しか見られない1PNや、全核が1つもみられない0PNの状態が時々見受けられます。
前核は形成から消失までの時間が限られているので、培養士からの説明では『前核が見える時間がバラバラなのでもともとは2個であった可能性や、観察後に2個になっている可能性もある』と言われるかと思います。
『本当にそうなの?』と思われる患者様もいらっしゃるかもしれません。
しかし、今回の学会で体外受精では0PN胚の57%、1PN胚の70%が実は正常な受精をしていたという発表がありました。この発表のように正常な受精の確認が出来ていない場合でも正常な胚を獲得できることもあり、特に胚盤胞まで育った場合はその可能性が高く、移植に用いることは可能だと思います。
しかし、正常な受精は確認できていないと聞くとやはり不安かと思います。
患者様ご自身の卵ですので気になることがあれば、質問してください。
ご希望があれば培養士がお答えしますので、それにより少しでも不安が解消できたら幸いです。