医局カンファレンスです。
少し前の論文ですが、興味深い結果が出ていましたので紹介します。
(J Endocrinology 2015;226 167-180)
高齢不妊患者の顆粒膜細胞(卵子の周りを取り囲んでいる細胞)では早期黄体化がすすみ、これが卵子の質を低下させている可能性があると以前より指摘されています。これを避けるために、この論文では、通常の採卵に至る卵胞径(①19-21mm)よりも早めに(②16mm)採卵するほうが卵子及び胚の改善が得られたとしています。
卵子の発育には色々な要素がかかわってきますが、この論文では顆粒膜細胞におけるFSHR(FSH receptor),aromatase(CYP19A1),17β-hydroxysteroid dehydrogenase(HSD17B), LHCGR(LHreceptor),P450scc(CPY11A1), progesterone receptor(PGR)の発現をみています。
高齢患者ではFSHR 、CYP19A1、HSD17B の発現が20代、30代の患者に比べると低く、LHCGR 、CPY11A1、PGR は高い傾向がある結果がでました。そこで、①と②での顆粒膜細胞での遺伝子発現に変化が出るかを実験したのです。
その結果、②のほうが①より FSHR 、CYP19A1は高くなり、LHCGR 、PGRは低くなっていました。つまり、20代30代の発現に近づいたということです。
とれた卵子や胚については、未熟卵子数は②>①ですが、良好胚は②>①という結果でした。また血液中のホルモン値で、P4/E2も②の方が優位に低くなっていました。すなわち早期黄体化が防がれ、卵子の質の改善につながったのではないかと結論づけています。
高齢女性の場合、早期排卵や退縮卵胞によく遭遇します。私たちが一番苦慮しているところであります。
この論文の結果のように少しでも卵子の質の改善が得られるなら、今後早目に採卵を決定してみることも一つの選択肢として取り入れたいと思いました。