医局カンファレンスです。
PCOS(多嚢胞卵巣症候群)に関する論文を紹介したいと思います。
PCOSの診断となった患者の父親と男兄弟のホルモン状態をPCOSでない女性の男性家族と比較検討したものです。
(Fertility and Sterility Vol.106,No1,July 2016 p50-55)
PCOSの患者の①父親63人、②男兄弟66人、コントロール群として③45-65歳30人と④18-35歳58人に分けて比較検討しています。
血中のテストステロン、LH、FSH、AMH、インヒビンB、E2(エストラジオール)、E1(エストロン)について検討しています。
結果はLH、FSH、AMHでコントロール群と比較してPCOS患者群が有意に高い結果となっていました。
同世代別にわけての検討でもPCOS患者群が優位に高い結果となっていました。
(補足)
男性ではAMHは精巣のセルトリ細胞で産生され、無精子症に関係していると言われている精液内のAMH濃度を減少させています。また、マウス実験において、AMHは性腺刺激細胞でFSH、LHの遺伝子発現を増やし、GnRH依存性のLH分泌を増やすことがわかっています。
さらに、PCOSの原因として、FSHBポリペプチド遺伝子領域内の染色体11p14に原因があることがわかっています。PCOS患者の男性家族ではFSHB変異の結果としてゴナドトロピンの分泌の変化が見られ、今回のような結果になったのではと結論づけています。
不妊治療の診察時だけでなく、婦人科診療時に無月経を主訴に来院されるPCOSの患者様によく遭遇します。
生殖年齢女性の6-10%にみられる疾患です。月経不順、排卵障害をともない、不妊治療が必要となる方が多いです。
今回の論文では、PCOSの患者様本人だけでなく、男性の親族の方にも、精巣機能に異常をきたしている可能性があることを示唆しています。