医師の田口早桐です。
最近特に増えている相談として、夫婦生活がうまくいかない、という内容があります。
不妊治療にあたって第一段階の治療は、当然のことながらタイミング療法、つまり排卵日前後に性交渉を持つ、というものですが、これがうまくいかない場合が多くあるのです。
いろんなケースがありますが、膣の中での射精ができないという膣内射精障害や勃起障害が多いですね。
特に毎日顔を合わせているが故に身近になりすぎているからか、奥さんに対して勃起できないというケースもあるようです。妻だけEDとも言われています。
泌尿器科に相談してみても、あまり真剣に取り合ってくれない場合も多いみたいですし、奥さんの方は子供が欲しいのにご主人が協力してくれない(協力したくても出来ないのですが)ので焦りから怒りに変わってきてしまい、収拾がつかなくなることもあります。
このような場合、ご主人の治療を、といっても非常に時間がかかりますし、なかなかうまくいかないケースも多いので、まずは不妊治療を優先させて、人工授精からの開始にします。人工授精はするのだけれど、禁欲はとくに必要ないし、人工授精当日も性交渉の制限はありません。プレッシャーがなくなれば、意外に性交渉もうまくいくものです。
しかし中には、稀ですが、マスターベーションでの採精すらも難しい方がいます。
いろいろな理由がありますが、これも治療が非常に難しいのには変わりありません。その場合は、精巣からの精子を採取して体外受精(顕微授精)をします。え~、そこまでして、と思われるかもしれませんが、このような例もあるのです。
(射精や性交渉などが)出来ない人にとって、出来ないものは出来ないのであって、また結構そういう人も多くいるのが現状です。メンタルじゃないかとか、トラウマじゃないかとか、言うのは簡単ですが、さまざまな要因が絡んでいるし、誰でもそうなる可能性があるし、何が正常ともいえないと思います。
そんな中で、不妊治療を行う立場からは、まずは責め合う事はせずに、現状を踏まえた上で子供を得るための技術を使いましょう、ということになります。生殖補助技術を利用するにせよ、ご夫婦が協力しあって作業することには、変わりないのですから。