こんにちは。培養士の垣井です。
先日、仙台で開催されました第20回日本IVF学会学術集会に参加してきました。
今大会のテーマは「Challenge to Excellent ART」と題され、より優れたART(assisted reproductive technology;生殖補助医療)の臨床や基礎研究、患者様の満足を得られるようなARTの姿を目指し様々な角度からの議論がなされ、とても充実した会でした。その中で「ARTと周産期合併症に関する課題」という発表がありましたので紹介させて頂きます。
日本を始めとした先進国では晩産化の傾向にあり、今後ARTが益々増加することは必至であります。
高齢妊娠では種々の周産期合併症と関連することが知られおり、早産や妊娠高血圧症候群(PIH)、癒着胎盤等の発症頻度が高くなることが報告されています。ART妊娠において周産期合併症は切り離せない課題です。
今回の発表では凍結胚移植と新鮮胚移植で周産期合併症の発症に差異があるかを調べていました。
結果として、凍結胚移植では新鮮胚移植に比べ早産、分娩前出血、SGA(Small for Gestation Age)児が減少し、LGA(Large for Gestation Age)児の増加がみられました。
凍結胚移植はホルモン補充周期が主流であり、より適切な子宮内膜の状態維持が可能なこと、また良好胚を選択できることが今回の結果に繋がっていると考えられます。同様に胚盤胞移植と分割期胚移植でも検討されていましたが、こちらは国内においても海外においても有意差はない結果となっていました。
現在治療を受けられている患者様は妊娠までの過程はもちろんのこと、妊娠から出産、そして出産後と多くの不安を抱えられていると思います。
講演の中でのある方の「高齢妊娠はリスクが高いことを強調すべきではない。
それよりも個々の患者様のリスクを適切に評価することが大切」という言葉がとても印象に残っています。
患者様に安心して治療を受けていただけるよう、生殖医療従事者と周産期医療従事者との細やかな連携、そして地域のサポート体制の構築、強化が今後益々大切であると感じました。
これからも個々の患者様に寄り添った医療の提供ができるよう努めていきたいと思います。